ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

カザン・オードの最期だ

【パラグラフ200→→→350:カザン・オード崩壊:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



噴火が更に激しくなり、玉座の間の天蓋にまで岩塊が叩き付けられる。
蒼い光に包まれた俺が否応なしに天蓋へ牽引されていく横で、丸石がスローモーションのように崩れ落ちていく。
視界が蒼一色に染まり――転送が始まり、五感はおろか時間感覚まで消失する――
城塞の警備兵詰め所近くの廃寺院。
その中央部の円形の台座が転送先だった。
地上の陽光に眼が慣れると、コー湖の煌めく水面や、その水平線上に浮かぶヘルドスの街が見えてきた。
地面は常に不安定に揺れ、死の城塞の城壁は崩れ、傾き始めている。
崩れ落ちた城門を潜る時、死にゆくカザン・オード が空から稲妻を引き寄せた。


波止場へ続く階段に押し寄せる獣人と奴隷が相争う間を掻き分けて進む。
知性化に至らなかった奇怪な獣たちは地面を這い回り、黒い粘液に濡れた手で岩壁に開いた穴を広げ、カザン・オード から脱出しようと藻掻いている。
階段に近づくと、奴隷の一団に捕まって地面に引き倒された。
「おいィ?このお人は味方らしいので助けるべき」
集団を率いるリーダー格らしい男に助け起こされるが時既に遅し……



彼らは間違いに気づいて謝るが、すでにナップザックは肩紐から引きちぎられていた。
(「アクション・チャート」からナップザックとナップザックの中身を消す。)




何ですと? ちなみに今回ナップザックにはロープ以外回復アイテムしか入っていない――つまりラウンスパーの薬×2瓶と回復薬を消すですと?
な…何だって――
ある意味……ハッパザックとでも言うべき……俺の俺の俺の俺の俺の俺のッッキャアァァーッッ!!!
「協力してこの呪われた島から脱出しなければ噴火に巻き込まれて死ぬるのは確定的に明らか」
「フフフ………フフッ………フフッハ………」
「おいィ?今なんと?お前らは今の言葉聞こえたか?……おいィ?」
「ハ ア ッ オ゛!!!」


そういう訳でなし崩し的に虐殺が始まった。
その者緑の衣を纏いて殺戮の野に降り立つべし。
異様な黄金の光を放つ剣を振るい、眼を暗い瞋恚の炎に燃やす、地獄から現れ出でた緑衣の悪鬼のことを生き延びた者は語り伝えるだろう。
その狼は情け容赦無く、見境無く、そして些かのの残忍さも無く殺し尽くした――と。
波止場に着く頃、通ってきた道は等活地獄――死屍累々の有様と化していた。
残った者は、全身に返り血を浴び、なおも死に渇き咆哮する狼と戦うよりも、沸騰する湖へ逃げる方を選んだ。


波止場の石段の下に雑草の絡み付いた石の扉があった。
隠されていた枝編み細工の小船とオール――カシン。
小船を湖に押し出し、遥か遠くに輝く緑色のパワー・バリアに隔てられた此岸へ戻るべく全力でオールを漕ぐ。
耳を聾するばかりのカザン・オード の断末魔の叫びが、幾度も谺し続けていた。


(つづく)