ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ15→→→138:玉座の間:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



扉の中央に付いている捩子のようなハンドルを回すと、扉が開いた。
壁も天井も床も鏡のように磨き抜かれた金属で造られた部屋だ。
低い鉄のテーブルには、坩堝、レトルト、梨型のフラスコ、捻じ曲がったガラス管が置かれている。
それぞれに色取り取りの液体が入れられ、不気味な泡を立てている。
ベラムで綴じた写本や乱雑な束になった羊皮紙が棚に押し込まれ、場所を競うように動物の内臓の標本がガラスの坩堝に収められ、微かな腐臭を放っていた。
恐らくザーダが錬金術を実践する為の部屋なのだろう。
役に立つ物を求め、棚を物色すると迷路に入る前に没収された武器が見つかった。
ソマースウォード を剣帯に吊し、銀の弓 を背負う(アクション・チャートに再記入)。
更に大瓶に入ったラウンスパーの濃縮液 を発見し、無言で喇叭飲みする。
普段の俺ならこの大盤振る舞いに狂喜乱舞しハッパカーニヴァルを開催ッ……更にはハッパフェスティヴァルまでもッ……というところだ。
それを押し止めているのは臓腑に蟠る煮えるがごとき怒り――その熱が昂ぶる程に、俺の殺意が更に凍りついていくのだ。
体力点を一気に8点取り戻し、ダメージは全て完治していることを確認する。
プラチナのお守り を見つけ、高熱を防ぐこの護符を手首に巻き付けて部屋を出る。


案の定、歩くうちに通廊の気温が急上昇した。
鋼鉄の壁は触れただけで火傷しそうで、靴底が焼けて煙が出始めている。
一時間以上も経過したような気がしたが、プラチナのお守り の効果か、何のダメージも無く数分後に通廊を抜けた。
黒い金属の門を抜け、螺旋階段を昇ること暫し――心臓が早鐘を打つ。
そこは支配者ザーダの黄金の玉座の背後だった。
玉座の上には二つの水晶が微動だにせず宙に浮いている。
一つの内側には漆黒の霧が悶え、もう一つの内側では黄金の焔が輝いている――ドゥームストーン ヘルドスのロアストーン だ。
主無き玉座――千載一遇の好機――そしてこれが最後の罠だ。
ザーダは玉座の間の何処かに姿を隠し、俺がヘルドスのロアストーン を手にするのを待ち構えているのだろう。
成すべきことは、既にカシンが教えてくれていた。


ソマースウォード の鞘を払うと、刀身が黄金の焔を纏った。
「熱よ――
ドゥームストーン に向かって振り上げた太陽の剣に囁く。
刀身がカザン・オード の地底にたゆたうマグマを呼び覚まし、その熱を吸い取っていく。
この邪悪の精髄が封じられた漆黒の水晶を破壊するには、太陽そのものの力が無くては敵うまい。


「光よ――
地底から湧き出る焔、天蓋の隙間から洩れる幽かな星々の光――遍くこの世の光が玉座の間に集まり、眼が眩むほどの乱反射を起こす。
太陽の夥しい光と熱が、空間を融かし尽くしていく――そして――


「魂よ!!!!!」
咆哮とともに、漆黒の水晶に黄金の刃を振り下ろす――


(つづく)