ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

またも精巧なザカーン像が虚空を睨む

【パラグラフ6→→→270:涙の海で溺れ死ね!(命令形):(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「佳くやった!」
ザーダの冷酷な声が響き渡った。
「お前には勇気があるようだな!だが筋肉ほど頭脳があるかな?はッ!見せて貰おうか」


黄金の玉座に座る支配者ザーダと、その頭上に燦然と輝くヘルドスのロアストーン
眼に灼き付いて離れないロアストーン奪取の為にはいかなる手段を以てしても、この呪われた迷宮から脱出しなければならない。
ザーダの玉座のある大広間まで戻る――言う程容易い話では無いが、出来なければそもそも探索の成功など覚束無い。
更に待ち受けているであろう罠を警戒しつつトンネルを進んでいく。
急な曲がり角に差し掛かった時、その困難の一つが姿を現した。


………………………………?
何この既視感……巫山戯てるの?と思いつつ歩を進めること暫し。


アッー!!!


そこは長身の青銅の像が鎮座する部屋だった。
身に纏うけばけばしいまでに豪奢な宝冠と特徴的な長衣。
それは砂漠の帝国バサゴニアの統治者――例外なくザカーンの名で呼ばれる――のものだ。
ザカーンの両手は絶望を現すかのように広げられ、その表情は深い憂鬱と悲哀に満ちている。
その背後に卵型の扉があるが、しっかり鍵が掛かっていた……。


どうして同じパラグラフなのよォーッ!


今やザカーンの深い憂鬱と悲哀とやらは俺にもしっかり伝染していた。
魔力の濃霧が薄れ、再び空気を読まない頭蓋骨が鴉めいた耳障りな声で告げた。
「ザカーンの声に耳を傾けよ。そして聞いた言葉の意味を考えるのだ。正しい答えを与え………」
「喧しいッ!鬱陶しいぜッ!ザーダッ!」
俺の罵声に恐れを成した頭蓋骨は天井の霧の中へと消え、ザカーンの出題が始まった。


「私の娘には兄弟と同じ数だけ姉妹がいるが、兄弟のそれぞれには兄弟の倍の数だけ姉妹がいる。さあ答えてくれ、賢き戦士よ。私には一体何人の娘と息子がいるのだろうか」


ここで時間を巻き戻して別ルートで攻略し直した訳だが……生憎有益な情報は転がっていなかった。
そんなことは別にどうでもいい。
前回も急ぐ余りに情報を取り損ねたが、この程度の「謎」では食い足りぬ。
そうとも。
一次方程式を用い、罠を抜けていくだけなら児戯に等しい
だが、この狼の矜持にかけて、容易い道を選ぶことなど許されぬ。
この『迷路』……
ザーダの残忍な愉悦のためだけに造られた暗黒の箱庭で、思い通りに踊らされてたまるか!
貴様こそ涙を流すような恐怖を見せてみろ、ザーダ!
小賢しい『試練』など、一つ残らず喰い破ってくれるッッ!
そこで問題だ!その前にどうやって例の水責めを突破するか?



3択−一つだけ選びなさい
 答え①ハンサムの狼は突如反撃のアイデアが閃く
 答え②仲間がきて助けてくれる
 答え③突破できない。現実は非情である。

 
答え――③ 答え③ 答え③


「よくぞ吼えた」
全力で回答を拒絶すると、頭蓋骨はくつくつと嘲笑した。
「愚かなり戦士よ……己が非力を思い知るが良い!」
頭蓋骨が頭上の霧に消えていく。
一万匹もの猫の鳴き声のごとき轟音とともに、ザカーン像から死の罠が溢れ出した。


(つづく)