ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ182→→→39:奥義波紋シャボンバリアー:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



非在の行間を潜り、時間を遡航するお馴染みの感覚。
一見隙の無いゲームブック業のようにも見える「秘奥義・パラグラフ逆行」だが、決して万能ではない。
「経験していない過去」にまで時間を巻き戻すことは出来ないのだ。
また、運だけで切り抜けた場面であっても、再度やり直す事になる。
最適解を知っていればいい、という単純な話でもないという訳だ。
ゆえに、このゲームブック業の最大の要は「どこまで時間を巻き戻すか」というところにある。
閑話休題


気がつくと、迷路の入り口近くの円形の部屋に佇んでいた。
手に掛かる剣の重みが、俺の戦闘力が20にまで回復していることを伝えてくる。
先程とは別のルート――左を選択し、徐に歩き出す。
数百メートルも歩くと、トンネルは急に右折した。
薄明に目を凝らすと、前方に大きな泡が浮きつ沈みつ漂っているのが見えた。
そして微風とともに此方へ向かってくるッ!



泡をかわしてトンネルを歩き続けるか。107へ。
泡に剣を突き立てるか。151へ。
ひきかえして右のトンネルに入るか。322へ。


不吉なイメージを幻視する。
剣を突き立てた瞬間、破裂した泡の衝撃波に巻き込まれる……。
ザーダの迷宮では、安全な選択肢こそが「罠」だと身をもって知ったばかり――ここで剣は使えない。
狭い廊下での回避運動は絶妙な身体操作を要求される。
カイの狩猟術を極めた狼の皮膚感覚に頼り、傍目には分からない程緩やかに移動する。
だが、泡は俺の動きが起こす僅かな空気の流れに乗り、追尾するかのように迫ってくるッ!
ううッ!
水中に手を突っ込んだときのようにッ!
泡の中に何の抵抗も無く腕が入っていくッ!
しかも腕を引き抜こうとしても、泡の表面張力が手首を締め付けて離さないッ!


藻掻けば藻掻くほど、泡が腕を這い上ってくる。
遂に泡は俺を完全に飲み込み、閉じこめてしまった。
透明な牢獄の中で呼吸をしようとするが、眼と喉に焼け付くような激痛が走る――糜爛性ガスのシャボンかッ!



剣を持っていて、泡の膜を切り開きたければ、26へ。
たいまつと火口箱 、あるいはカンテラ を持っていて、泡の膜を燃やしたければ、51へ。
カルトの火の球 を持っていれば、泡に剣を突き立てるか。145へ。
以上のどれも持っていなければ、192へ。


またしても剣を使えと要求される―― やはり罠なのだと確信するに至る。
ここは金属球に封印されたカルトの火の球 を取り出し、二つに分割して両手に捧げ持つ。
魔力の炎が透明な膜を融かし、縦に割れた泡の中に急激に空気が入り込んでくる。
通路を埋め尽くす泡の隙間に、カルトの火の球 を翳しながら前進する。
炎が触れる傍から、泡は次々に破裂していった。


泡の牢獄は、その脆弱な見た目とは裏腹に俺から6点もの体力点を奪っていた。
マグナカイの治癒術が緩やかに傷ついた組織を修復していくのを感じつつ、更に直進する。
ふと遠くの床に大きな影を見つけ、近寄ってみると幅10メートル近い大穴がその貪欲な顎を開いていた。
流石にロープを使ったとしても、これでは渡ることは出来ない。戻って別のルートを探索するべきなのか?
だがその時頭上の霧が薄れ、頭蓋骨――ザーダの分身が顕現した。
「お前に挑戦する…穴を渡る方法を見つけるか、さもなくばその場に留まり戦え!」


(つづく)