ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

人の脳を捕食する擬態生物だ

【パラグラフ198→→→100:緑色の死:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



乱数表は――「2」。
寸前で床を転がって致命的な一撃を回避したが、鋭い鉤爪が額を浅く掠めていた。
この“腕”は人間の切断されたそれではない。
もっとおぞましい何かだ――と言うよりもともと擬態する性質のある捕食者なのだろう。
擬態のセンスは創造主のブラックユーモアの産物だろうが、問題は“腕”の主食――つまり俺の脳だ。
続け様に俺の頭蓋だけを狙う執拗な攻撃を回避し、抜き打ちに斬りつける。



ラコス 戦闘力点18 体力点30


念撃は通用しない為、戦闘比は+2だ。
一合――擦れ違い様に、鉤爪とも節足ともつかぬ代物を2本斬り落とす(乱数表0)。
二合――身を低く沈め、半ば“腕”を両断する重い一撃を叩き込むが、残る鉤爪が再び額を掠める(乱数表5)。
三合――咆哮とともに跳躍し、“腕”の背骨に相当する部位を鉤爪ごと粉砕する(乱数表0)。


ラコスは遂に床に落ちて動かなくなった。
剣先で何回叩いても反応が無い――回復薬の栓を片手で開け、警戒しつつ近づく。
飲み干した回復薬の瓶を足元に捨て、覗き込もうとした時、“腕”が顔に飛び掛かってきた。
本能的に俺自身の腕が蛇のように動き、関節を絡め取った“腕”を後方へと投げ放つ。
“腕”は回転しつつ緑の石柱の方向へと飛んでいったが――石柱の間で轟音とともに爆散した。
緑色の死――石柱の間に流れていた不可視の魔力の罠――に激突したのだ。
“腕”は再生不能な数千もの燃え滓となり、ついでに予告されていたザーダの死の罠を喰い破った、という訳だ。
暫し勝利感に酔いつつ一息つく。
マグナカイの治癒術が額の傷を塞ぎ、失った血を造り出すまでにものの数分も要しない。


緑の石柱の間を安全に通り抜け、トンネルへと入ると、「中々佳いぞ!」ザーダの声が虚空から響き渡った。
「エルジアンの臆病者どもはとうとう私の迷路に相応しい戦士を送り込んで来たようだ」


黄金の玉座に座る支配者ザーダと、その頭上に燦然と輝くヘルドスのロアストーン
眼に灼き付いて離れないロアストーンを奪取する為にはいかなる手段を以てしても、この呪われた迷宮から脱出しなければならない。
ザーダの玉座のある大広間まで戻る――言う程容易い話では無いが、出来なければそもそも探索の成功など覚束無い。
更に待ち受けているであろう罠を警戒しつつトンネルを進んでいく。
急な曲がり角に差し掛かった時、その困難の一つが姿を現した。


(つづく)