ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ204→→→198:栄光の腕:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



一歩踏み出すごとに気温が高くなったが、一度炎に包まれると、熱さを全く感じなくなった。
むしろ真夏の微風のようなこの清涼感……そしてこの清涼感!!
なんつーか気品に満ちた風っつーか…例えるとアルプスのハープを弾くお姫様に吹くような風っつーか……
兎に角スゲー爽やかなんだよッ!!!


一頻り虚空に向かって熱く語った俺は、概ね満足して再びカイ・マントを着た。
ザーダの創造した幻の焦熱地獄をあとに、無人のトンネルを進む。
50mも進まないうちに、円形の広間に出た。
優香の中央にある方形の台座には、切断された人間の腕が置かれている。
腕は死斑に覆われ膨張し、指先は黒ずみ腐敗が始まっていた。
台座の向こうには、緑がかった2本の石柱に支えられたトンネルが延びている。


タビグの最期の言葉が脳裏に甦る。



最後の刹那、タビグは意識を取り戻した。
「迷路に注意しろ……緑色……は死だ」
戦士は永遠の眠りに落ちる前に、そう言い残した。


何の前触れも無く、切断された腕が五指を脚のようにして立ち上がった。
巨大な蜘蛛を思わせるそれが花崗岩の台座の上を素早く這い、今にも襲い掛かろうとしている。
慌てず騒がず、カイ・マントの隠しから火種を取り出し、台座目掛けて叩きつける。
破裂音とともに、炎が台座を呑み込んだ。
“腕”は身を捩りくねって炎から逃れようとするが、やがて刺激臭のある黒煙をあげて燃え尽きた。
台座の下に横たわる消し炭と化した“腕”だが、油断は出来ない。
予想していたことだが――“腕”は焼け焦げた指の肉を引き裂き、またも動き出した。
天井近くまで跳躍した“腕”は、鉤爪を顎のように開き、蛇そのものの動きで俺の頭上へと迫る。
今や、乱数表の結果だけが全てだ――


(つづく)