ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

兜の下で獣の目が光を放つ

【パラグラフ110→→→パラグラフ69:狼と獣人兵団:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



咄嗟に石柱の陰に隠れる。
武装した兵士が4人、一列縦隊で入ってきた。
漆黒の鎧に頭蓋骨を模した兜――ドラッカーか?
軍装こそヘルジェダドに坐す暗黒の半神ダークロードの尖兵を思わせたが、少なくともドラッカーは人間の範疇だった。
石棺の前で立ち止まった兵士たちは、人間と言うより――直立した猪だ。
豚めいた鼻面は黄褐色の剛毛に覆われ、下顎からは牙が突き出している。
撫で肩が不自然なほど長い腕へと続き、黄色い鉤爪が生えた五指が黒鉄の鎌槍を握っていた。


この島に来てからというもの、擬態生物やら大蛇やらと遭遇してきたが、『兵士』を見るのは初めてだということに思い至る。
湖岸付近は兎も角、城塞内部では単に怪物が野放しになっている、という訳ではないようだ。
俺の推測の域を出ないが、カザン・オード の現在の支配者によって獣人の軍隊が組織されているのだ。


そうこうしている間に、獣人の一人が灰色の花崗岩で出来た石棺を指差した。
石棺の表面に組み込まれた三つのボタンを押すと、隠されたパネルがスライドして開き、下り階段が見えた。
獣人たちが入っていくと、扉は音もなく閉まった。


成る程、そういう仕掛けか。
石棺の表面には奇妙な生き物の行列が刻まれていた。
人間もいれば獣もいるが、大半は絶滅種と思しきものばかりだ。
問題の三つのボタンの周りには、石の蛇が蜷局を巻いている。
この手の錠前には見覚えがある。
故国の王都ホルムガードの錠前屋が作っていたのを見たことがあるのだ。
同じ構造なら、三つのボタンを正しい順番でそれぞれ一回押す。
そして巧妙に隠された垂直の裂け目――隠された扉が開くという訳だ。
そういえば階段で見かけた蛇の浮き彫りとこの紋章は良く似ている……。


3番目のボタンを押すと、隠されたパネルがスライドして開き、鉄扉へと続く下り階段が見えた。
鍵はかかっておらず、衛兵もいない。
とはいえ監視が無いと思うほど、この狼はお目出度く出来ていない。
幾つかの部屋を通過していくが、どれも永年使われた形跡が無い。
腐食した襤褸切れと化したカーテンや崩れ落ちた家具類だけが、贅を凝らした秘密の地下宮殿の名残りだ。


入ろうとしていた部屋から人の話す声が聞こえ、物陰から覗き込む。
手足の細長い緑色の皮膚をした生き物が、部屋の中央にあるテーブルに着いていた。
彼らはテーブルに広げた羊皮紙を指差しながら、カイ・マスターたる俺にも未知の言語で、何やら声高に議論していた。
見たところ、纏っている紫の長衣に武器は隠されていないようだが………。


太陽の伝授のサークルを修めていれば、244へ。
何も気づいていない生き物にいきなり攻撃を仕掛けるか。295へ。
こっそりと部屋を横切り、向こうのトンネルへ行くか。343へ。


極力無駄な戦闘は避ける。
武器を持っていなかろうが、致命の罠が仕掛けられている可能性は否定できない。
回復手段を失い、体力点が半減している現在、リスクは冒せないのだ。
だが。


部屋の四方に並ぶ松明に炎が燃え、とても明るいし、家具も殆ど無く、隠れる処も無い。
「乱数表」を指せ。隠蔽術を身につけていれば、その数に3を加えよ。
7以下なら、69へ。
8以上なら、197へ。


結果は………………………7。
絶望した!
分かってはいたが隠蔽術の使え無さに絶望した!


(つづく)