ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

ハクタラトンの子供たち

【パラグラフ63→→→パラグラフ110:ギャ〜なぜ生まれてきやがった〜:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



神経を極限まで緊張させると同時に、筋肉を極限まで弛緩させる。
何時、如何なる方向から矢が飛んできたとしてもそれが届く前に対応できる――カイ・マスターの研ぎ澄まされた集中力が可能にする境地だ。
一切の音を消し去り、狭いトンネルを這い進む。
そして。
常人の耳には捉えられないその音は、部屋の中からではなく、今俺の隠れ潜むトンネルの中から聞こえてきた。


それは――卵の割れる音。
振り向くと、殻を破って粘液に濡れた腕ほどもある太さの蛇の群が誕生していた。
ハクタラトンの落とし仔たちは俺の体温を感知し、飽くことを知らない食欲を満足させる(原文ママ)ために、俺の方へ向かってきた。


……俺は離乳食じゃあないぜッ!
大体飽くことを知らねーってんなら……何を喰っても永久に満足しねーってことじゃあねーか!
てめーが満腹するまで俺は何年待ちゃあいいんだよッ!
困ったガキだぜッ!


ボゴォ


再びマグナカイの動物コントロールの技に頼る。
俺が蛇を見て抱く「生理的嫌悪感」を「そのまま蛇に返す」ぜッ!
蛇の群は滑りながら踵を返し巣穴へと戻っていった。


脱出できるだけの裂け目が出来ないかと、剣の柄で壁を殴りつける。
手応えこそなかったが、天井に煉瓦で隠されていた跳ね上げ戸が見つかった。
髪の毛ほどの隙間から洩れる微かな光に力を得て、煉瓦を一撃で突き崩す。
埃が収まるのも待たず、上へと跳躍する。
二列に石柱が並び、湿った土臭い部屋の天井を支えている。
床の中央には花崗岩の石棺が置かれているが……さて。
思案していると、右手の暗いトンネルから、鎧の擦れ遭う金属音と足音が聞こえてきた。

(つづく)