ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ219→→→パラグラフ63:劫火:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


どこからか、残忍な笑い声が蛇の巣に満ちた


蛇の瞳に深々と斬りつけ、視力を奪う。
怒濤の連撃を瞬時に脳内で組み立て、攻撃に移る――その刹那、鉄格子の向こうから、紅蓮の火球が撃ち込まれた。
な……何だってェェェーッ!?
何者とも知れぬ――恐らく魔術の使い手――更なる敵手が、闇に潜んでいたというのか!
己の迂闊さを呪う余裕など無い。
肩への直撃が、手の感覚を奪い(体力点を6点失う)、武器を取り落とす。
大蛇は苦痛に身を捩って怒り狂い、顎を大きく開き、俺の臭跡を執拗に探っている。
蹌踉めいた俺が再び武器を拾う間もなく、巨体に似合わぬ速度で殺到してきた。



ジャイアント・ハクタラトン 戦闘力点20 体力点45


武器を失った俺の戦闘力は16点まで下降している。
念撃を加えれば18点、戦闘比は-2となる。
二回戦が終了した時点で武器を取り戻せるが、ただし生きていればの話だ。
更に、治癒術を身につけていなければ、蛇の毒のため、戦闘の間失う体力点は通常の2倍になる。
戦闘力点20自体は大したことねーが、体力点45はそう簡単に倒せる相手ではない。
かと言って俺自身の体力も万全で無い今、念波動を使って形勢逆転を狙うにはリスクが大きいのだ。
これが逆境かァーッ!


渾身の乱数表は「1」と「5」。
体力点は――残り7点。
猛毒に冒され、息も絶え絶えな獲物を一呑みにせんとハクタラトンの顎が迫る。
だが。
かかったな!ハクタラトンッ!
これが我が『逃走経路』だ…貴様はこの狼との知恵比べに負けたのだッ!
俺が吹っ飛ばされてゆくこの位置に見覚えはないか?爬虫類のお前には何処も同じに見えるのか?
そうだ……ソマースウォード に辿り着く為の『逃走経路』だ!


足元のソマースウォード を頭上へと蹴り上げるッ!
牙を剥いてソマースウォード の柄を空中で噛み、跳躍とともに振り抜く――乱数表は「9」!
爆発的な脚力が生み出す神速の斬撃が黄金の軌跡を描き、ハクタラトンの頭蓋を斬り飛ばしたッ!


何処か狂気めいた呪詛の叫びが鉄格子の向こうから聞こえるのと同時に、頭を失った蛇体が床に崩れ落ちた。
再び紅蓮の火球が無数に撃ち込まれ、ハクタラトンの死骸を焼き尽くしていく。
ここはひとまず死の驟雨から逃れるべく、奥のトンネルへと急ぐ。


「………………………」
死闘を経て辿り着いたトンネル――行き止まりなので、最早小さな穴としか言いようがない――の前で、俺は絶句していた。
先程のハクタラトンのものだろう、ビア樽ほどの巨大な卵が幾つも置かれている。
ところどころに、死の城塞の罠に嵌った冒険者たちの装備が散乱していた。
卵に触れると、革のような殻を通して、中身が微かに動くのが感じられる。
卵を壊さないよう脇に転がし、巣を調べていく。
取り敢えず武器や鎧が見つかったが、生憎間に合っているので華麗にスルー。
ようやく目当てのブツ――ラウンスパーの薬 を見つけ、手持ちの分と併せてその場でキメる。
体力点を14点まで回復し、一息ついたところで背後から弓を引く音と乾いた叫び声が聞こえてきた。


(つづく)