ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ164→→→パラグラフ219:蛇の窖:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



意識を取り戻すと同時に、武器を手探りで掴む。
頭痛を堪えつつ、剣を杖に起き上がって周囲を警戒する。
そこは薄暗い部屋の片隅に積み上げられた堆肥の山頂だった。
堆肥の植物の腐敗臭に混じり、爬虫類特有の臭いがする――恐らく蛇だろう。
視力が戻ってくると、床を覆う軟泥の中に、人骨らしきものが見えた。
消化されきっていない肋骨、頭蓋骨が二つ、砕かれた脊椎が幾つか。
人間を丸呑みにできる図体の大蛇が、近くに潜んでいるのだ。


冷たいものが首筋を伝う。
天井の鉄格子から洩れてくる光が揺らめき、その向こうに骸骨めいた相貌がちらりと見えた。
人ならざる者の悪意に満ちた残酷な嘲笑が、静寂を引き裂く。
声に誘われるように俺のいる堆肥の山から出てきたのは、楔形の巨大な蛇の頭だった。


堆肥の山を駆け下り、部屋の反対側の隅まで走ると、俺自身の鼓動が大きく波打つ音が聞こえてきた。
今や蛇は天井まで届くほど鎌首を掲げていた。
緑色の鱗に覆われた頭蓋の中央には、縦に深く裂けた黄色の隻眼がある。
二叉の舌をちらりと出し、腐った巣から蛇体をのたくらせて出てきて、滑るように此方に向かってきた。
再び、あの嘲笑が部屋に満ちた。


嘲笑の主の存在も気になるところではあるが、今は眼前の脅威を排除することが最優先だ。
石床を規則的に叩き、蛇にこれ以上近寄らないよう命令する。
かつての狼なら、こうした怪物を従える術など持たなかっただろう。
マグナカイの動物コントロールを習得し、プライメイトの階級に到達したカイ・マスターならではの術技だ。
冷血動物の隻眼が俺を睨み返すが、床の震動が長大な背骨を駆け上るにつれ、徐々に黒く細い瞳孔が散大していった。
蛇の貧弱な脳に疑いが芽生え、温血動物を捕食することへの欲望を締め出し、俺への攻撃を躊躇わせているのだ。
巨大な頭部が左右へと揺らぎ、背後に小さなトンネルがあるのに気づいた。
俺の隙をついて、牙から毒液を滴らせた蛇が襲ってくるが、即座に反応し、更なる命令を叩き込む。
蛇は渋々ながら俺の命令に従って堆肥の巣へ戻り、蜷局を巻いて眠りについた。
だが必殺の好機を逃す狼ではない。
同時に無音で地を蹴り、蛇目掛けて跳躍する――


(つづく)