ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

巨大な脳髄が宙に浮かぶ

【パラグラフ41→→→パラグラフ342:灼けた砂浜!黒い脳髄!:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



一息つき、バサゴニアの酒、クールシャーの瓶を空ける。
マグナカイの治癒術を未だ習得していない俺にとって、数少ない回復薬の存在は死活問題なのだ。
恐らく本編中で回復手段があるものと思われるが……確証は無い。
ならば今ここで体力点を全快させておく、という訳だ。


カザン・オード の基部となっている高い岸壁へと走り出すと、寒々とした岸辺から、何者かの咆哮が追いかけてきた。
更に走る速度を上げるが、温かかった砂が、徐々に耐え難いほどの熱を発し始め、足裏をじりじりと焦がす。
見ると、数メートル先の焼け焦げたような黒い砂の上に踏み石が並んでおり、岸壁にできた亀裂へと続いていた。
石から石へと飛び移りながらも、背後から滑るような音を聞いて振り返る。


黒い球体が湖から出現していた。
この世のものならぬ絶叫が夜の静寂を破る。
それは暫し湖の上を漂っていたが、恐るべき速度で俺のいる方向へと迫ってきた。


パワー・バリアの微かな緑色光だけを頼りに矢を番える。
砂浜に散乱する丸石の間を縫ってやってくる球体に狙いを定め――
乱数表は「3」。
デュアドンの銀の弓 のボーナス+3を加えた結果、「6」だ。
命中する寸前、黒い球体は急激に進路を変え、矢を避けた。
矢が湖面に落ちるのを見届ける暇もなく、弓を肩に担ぎ、剣を抜く。


球体は俺の前方3メートルの空中で止まった。
今や、俺にもその姿がはっきりと見えていた――黒い鞭毛に覆われた感覚器官を備えた巨大な脳髄だ。
優しいがどこか不気味な口笛めいた音が表面の穴から聞こえてくる。
少しずつ音のピッチが上がっていくとともに、激しい頭痛が襲ってきた。
奥歯を噛み締めて耐えるが、遂に指が震えだし、剣が砂浜へと落ちる。


それを見届けたかのように脳髄の下部が裂け、膨れた巨大な唇が現れた。
噴き零れる寸前のミルクのように上唇が下唇に覆い被さっており、肉襞の隙間から長い巻き鬚のような触手が突き出される。
触手が狼の喉笛目掛けて迫る――


(つづく)