ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

猛毒の水蛇レカー

【パラグラフ135→→→パラグラフ158:嘲笑う水蛇:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



二条の緑色の光が、カザン・オードの崩れかけた城壁を照らし出す。
さながら巨大な蜥蜴の死骸の砕けた肋骨といったところか。
再び閃光が奔り、高楼の無数の窓――壊れた硝子の破片で鋭さを増している――が巨獣の複眼となって一斉に瞬く。
波止場に突き出ている黒い石の壁には、ガーゴイルの彫刻が刻まれている。
ガーゴイルはその顎に錆びた鉄の環をがっきと銜えており、それぞれに滑ったロープが巻き付き、水中に垂れ下がっている。
波止場付近は大型船が横付けできるほど深いが、流速とうねりの大きさから考えると、小型の網代船で接近するのは難しいだろう。
と、高波がやってきて、船を波止場に叩きつけようとする。



オールを手放し、ロープにしがみつくか。203へ。
小船から飛び降り、遙か西の岩場へ向かって泳ぐか。325へ。
予知を身につけていれば、57へ。


生憎だがマグナカイの予知は身につけていない。
滑る手で緑色のロープを掴み、波に呑まれないよう両脚を組み合わせる。
次の瞬間、夜の闇の中に木ッ端微塵になった小船の破片が飛び散り、跡形もなくなった。
いきなりロープが揺れ、黒い水から蛇のような頭が覗いた。
それは一旦水中へと潜ったが、急浮上したかと思うと、黄色い短剣めいた牙を剥いて俺の方へと泳いできた。
白濁した両眼は光を感じている訳ではなさそうだが、別の手段であくまで俺を凝視しているらしい。
こいつは猛毒の水蛇レカーだ――攻撃の瞬間、蛇体にしがみつくと同時に抜刀する。


レカーは俺を払い落とせず、苛立ってのたうっていたが、鎌首を起こし、毒液を俺の首筋めがけ吐きかけた。
カイ・マントの分厚い布地を通してさえも、燃えるナイフに刺されたような激痛が襲う。
水蛇は忍び笑いを漏らしながら――邪悪な知性があるのだ!――先割れした舌をシュルシュルと出してきた。



レカー 戦闘力点16 体力点30
危険な位置にいるため、戦闘の間、盾は使えず、レカーの腐食性の毒のため、失う体力点は通常の三倍になる。


彼我の戦闘力の差は盾が無くとも+12。
そして乱数表は8。
この呪われた島においても、ソマースウォードの威力はかくれもなかった。
一刀両断。
この蛇を「先っちょ」から「ケツ」までとことんやるぜッ!


俺が剣を一振りすると、レカーの縦分割された頭は回転しつつ、黒く冷たい水中へと落ちていった。
蛇体に細波のような死の痙攣が奔り、俺もまた宙へと放り出される。
数秒後、水飛沫をあげて湖面に激突し、石のように沈んでいく。


(つづく)