ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ118→→→パラグラフ19:スーパーリアルバウト餓狼伝BOY:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



絶望的なまでの窮地――
並みのゲームブッカーならば立っていることすらできないであろう―― それほどの窮地であった。
だが―― だが、どうしたことだ。この俺には臆した様子はない。
むしろ落ち着きすらも感じさせる。


本文の記述を目にした直後、咄嗟に手元を確認していた。
挟まった『指』を確認し、そこに唯一の活路を見いだすッ!
発動ッ!


「秘 奥 義 ・ 指 は さ み ノ ゾ キ!!!」


実は今の選択は本気じゃなかったッッ!!
ぜ〜んぜん本気じゃないッ!!
ちょっとした好奇心から覗いてみただけだから……指を挟んであったパラグラフに戻りたいんですが構いませんねッ!


……日頃からの紳士の嗜みが役立ったぜ。
紳士たるもの、常に前後2パラグラフを指で穿ち抜くべく鍛錬を怠ってはならないのだ。


カイ戦士ローン・ウルフ―― 「今回は流石に無茶ではないか」
そんな疑念を抱かせる俺であった。



隊長の申し出をツンデレッ面で承諾し、ストーン川下りの旅に向かう。
翌朝は霧雨で視界が悪く、甲板に上がったときには濃霧で一寸先も見えやしない。
灰色で湿った空気をどれだけ見通したところで、太陽のサークルを修得していない俺に流木止めが見える筈もなく……
激しい衝撃が『カゾナラ号』を襲い、脳天を船縁にうちつけて体力点を2点失った。
慌てて体勢を立て直すころには川船は完全に流木止めに串刺しとなり、次々にデルデン人の川海賊が迫ってくる。
「戦闘開始!」
隊長が叫び、傭兵と海賊たちは猛然と戦い始めた。
またしても一群の川海賊が現れ、優位を確信した笑いを浮かべつつ迫ってくる。
俺は無言のまま脚を組み替え、デュアドンの銀の弓 に矢を番えて先頭の海賊を狙う。
絶え間ない振動が不規則に突き上げ、傾いた甲板の角度は微妙な偏差を要求する。
弓の上級武術を身につけていない以上、乱数表で6以上はかなりシビアだ。
当たる筈がないと敵も高を括るのも当然だろう。
だが、この弓を以てすれば、射抜けぬものなど……無いッ!
魂を込めて乱数表を指す。


―― 結果は、「3」。
仰天するようなミスショット。これで命中する訳がない―― ただの弓ならば。
しかし、デュアドンの銀の弓 が持つ+3のボーナスを加えたとき、因果は逆転する――


男は叫び声をあげながら倒れた。
矢は胸に深く刺さり、先の羽根の部分しか見えないほどだ。
仲間は恐怖のあまり目を大きく見開き足をすくませた。
君が近寄っていくと、海賊はちりぢりになって逃げた。77へ。


唯の一射で敵は総崩れになり、傭兵たちが暗いストーン河の水中に追い落とす。
薄く笑みを浮かべた俺は弓を担ぎ、黄金の焔をあげるソマースウォード を引っ下げて新たな獲物を求め甲板を走る。



凶暴な海賊たち 戦闘力点20 体力点30


縦横に剣を薙ぎ払い、揺れる甲板を不動の大地さながら右に左に敵を斬りたてる(乱数表7)。
それでも敵の層は厚く、死体の影から不意打ちで肩口を負傷するが(乱数表2)、
その程度で狼の殺戮を止めるには、デルデン人はあまりにも弱すぎた(乱数表0)――


戦闘比+10。カイ・マスターと太陽の剣を以てすればこの程度の敵は物の数ではない。
3点の負傷にとどめ、俺はデルデン人の川海賊をカゾナラ号から一掃した。
有り難いことに霧も晴れてきた。
雪をいただくセナー山脈、そして、花と葡萄酒とハッパの都、麗しのリューエンが姿を現す。
地平に都の尖塔を見いだした瞬間から、俺は涎を零していた。
レンダリムの万能薬 を欲して喉がひくつき声さえ出せもうさぬ。
ハァハァ早くキメたい…
俺の人生最良の一日が始まろうとしていた。
龍王ダークロード・ザガーナを倒して故国ソマーランドを救った日でもなく。
宿敵ハーコンを永遠に葬った日でもなく。
リューエンで目眩くばかりに大人買いするこの日こそ、俺の記憶に残る至福の日となるだろう……イェッヒ!

(つづく)