ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ13→→→パラグラフ102:悪疫の祭司:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



金色の杖から放たれたエネルギーが俺の胸めがけ飛来する。
判断を迷っている猶予はない。



弓を持っていて使いたければ、
弓を持っていなくて逃げたければ、
武器を抜き、戦いに備えたければ、


この選択は巧妙な罠だ。
弓を持っていれば、有利なボーナスを想定し、まず弓を選択したくなるのが人情というもの。
だがこの時点では、既に破壊エネルギーの塊は撃ちだされた後。
弓を構えて敵を狙ったとて、致死の攻撃を回避することなどできはしない―― !!
故に今の俺が取れる最善の一手を選択する。
魔力殺しの黄金の刃、ソマースウォード を抜き放ち、大ドルイドに向き直る。
初撃は上体を揺らして紙一重で避けるが、間髪入れず、枯れ葉を踏みしだくような音をと共に次弾が放たれる。
正眼に構えたソマースウォード を直撃し、刀身に絡みつき、暴れ狂う魔力に身震いが全身を走った。
お返しとばかりに頭上高く振り翳すと、剣尖から緑と黄金の焔が奔騰した。
負の魔力と苛烈な陽光が渾然となって威力を倍化し、憤怒に歪んでいた大ドルイドの顔が恐怖で蒼白になる。
次の瞬間、轟音とともに出現した黄金の火球が大ドルイドの痩身を木ッ端微塵に引き裂き、灼き尽くしていく。
これに力を得て一歩踏み出すが――
直後、俺は戦慄した。
……残りのドルイド全員が、法衣の下から大ドルイドと同じ金色の樫の杖を取り出したのだ。
彼らが一斉に杖を掲げると、濃密な草いきれが大気に充満し、呪詛とともに不可視の力が綯い合わさっていく。
太陽の剣を破壊すべく、彼らは持てる全ての力を結集して攻撃しようとしている!!


迷うことなく俺は逃亡を選択した。


身を翻して茂みに飛び込み、潅木や枝葉の間を獣の速度で疾駆する。
鋭い音を立てる魔力の蔦が頭上を掠め、太い枝に絡みつき、一瞬で両断した。
更に、一抱えほどもある胴回りの大木を魔力の鏃が命中し、大穴を穿ち抜いたその威力に足を速める。
一挙動で馬に飛び乗った。
悪夢のような緑の触手が次第に狙いを外し遠くなっていく。


君はセナー・ドルイドの秘密の儀式を目撃し、生き延びたのだ。
この儀式を目撃しながら生き延びたものは数少ない。
君はそのことを誇ってよい!


―― セナー・ドルイド
忌まわしい敵の正体を知り、どれほど自分が死に近づいていたかを悟って戦慄した。
セナー・ドルイドはダークロードの衣鉢を継ぐ『真なる邪悪』。
それはローン・ウルフが遂にマグナカイの奥義を極め、マグナマンドを半神の影から解放した後の物語。
弱体化したダークロードに次いで、闇の神ナールの尖兵となった堕落した人間たち。
最強のカイ・グランドマスターを幾度も破滅の瀬戸際に追い込むことになる、疫病と腐敗の祭司。
人間でありながら自ら全生命の天敵となった存在―― それがセナー・ドルイドなのだ。
魔力喰らいの太陽の剣を前に、怯みもしなかったのも頷ける。
今の俺では、奴らに敵うはずもない。
13巻以降は戦闘力点40点超の敵が平然と立ちはだかる人外魔境。
カイ・マスターになったばかりの狼にはまだ少し酷な世界だ。

(つづく)