ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

炭化した小屋が戦火の痕を残す

【パラグラフ175→→→パラグラフ13:ドルイドの脅威:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



……別に自殺志願じゃあない。
既に、俺はストーンランド中を隈無く歩き回ってきた。
となれば、今までとは違うルートを旅してみたいのも、また心情というものだろう。
バレッタをあとに、月明かりの沃野を夜を徹して走り続ける。
領主館の先にある分岐路に辿り着いたのは、翌日の午後遅くのことだった。
天文台の地下でグウィニアンに貰った食糧を囓りつつ、俺はソーレーンへの分岐路に視線をやった。
この「アモリー〜ソーレーン」ルートは、初めて旅する道程だ。
何が起きるか期待に胸を膨らませ、馬を進めていく。
ていうか。
未だ目にしてはいないが、盗賊団と遭遇し、結果的に大儲けする展開が何処かにあったはずなのだが……


ソーレーンへの街道は、戦争の爪痕が残る広い谷へと続いていた。
壁が崩れて屋根が焼け落ち、いまや住むものもない小屋が道の左右に点在している。
灰色に澱んだ川に架かる老朽化した橋を渡り、谷間の奥の崖へと登っていく―― そこで気がついた。
眠気を誘うような、低い歌声が雑木林の奥から響いてくる。



馬から下りてその声の主を探すか。
声は無視して、ソーレーンへ走り続けるか。
予知を身につけていれば、


しかも危険を知らせるマグナカイの「予知」の選択肢つきだ。
遂に盗賊団に遭遇か?金目のものを剥がれる前に剥ぎ返すことができるのか?
用心しつつ街道に馬を繋ぎ、森の奥深くに分け入っていく。
基本的なカイの教えを駆使し、足音も立てず茂みをかきわけ枯葉の上を歩き、中央に大きな天然石がある開けた集会所に近づいた。
10人ばかりの男が法衣を纏い、石の祭壇を囲んでいる。
痩身の大ドルイドは濃緑色の不吉な仮面を被り、金色の樫の杖を祭壇に差し伸べた。
巨大な蟇蛙めいた生き物―― 荷運びに使う役畜、スロートだろうか―― が、手足を広げ青白い腹を見せて天然石に横たわっている。
金色の杖が生贄の頭の周りを巡ると、のたうつ蛇めいた光の帯が現れた。
無気味な歌声が最高潮に達する。
今や生贄の体は宙に浮き、祭壇の上1メートルほどを漂っていた。


……奴らは何者だ?
と、突如として大ドルイド怪鳥音をあげ、茂みに潜む俺の方向に振り返った。
完璧に気配を殺していたにも関わらず、見つかってしまったのだ。
金色の樫の杖から、眼も眩むほど輝く緑色の蔦が矢の勢いで撃ち出される―― 狙いは俺の心臓だ!



弓を持っていて使いたければ、
弓を持っていなくて逃げたければ、
武器を抜き、戦いに備えたければ、


本文に書かれた選択肢を目にした瞬間、その巧妙さに俺は呻いた。
直前で予知の選択肢があったのもむべなるかな。
長く冒険を続けてきた者だからこそ分かる……こいつは生死を分かつ極限の3択なのだ。

(つづく)