ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

アモリーの紋章は黒地に金の落し格子だ

【パラグラフ96→→→パラグラフ129:アモリーの一夜:(死亡・10)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



日が暮れてから一時間経ち、アモリーの門に辿り着く。
疲労が背を丸めさせ、黒々と暗夜に聳え立つ監視塔の下、挫けそうになる気持ちを奮い立たせて開門を待つ。
黒と金で統一された鎖帷子と兜を身につけた兵士が扉を開いて進み出る。
兵士の盾と肩当てにはアモリーの紋章が入っていた―― 黒地に金の落とし格子だ。



通行証 を持っていれば、49へ。
通行証 を持っていなければ、221へ。


領主の屋敷で奪った通行証 を差し出す。
四角い青色のカードを引ったくるように奪った衛兵は音を立てて爆ぜる壁の松明を取りあげた。
まずカードを、次に俺の顔を揺れる炎でじっくりと調べる。
毛深い手がカードをくしゃくしゃに丸めたので一瞬愕然とした……やはりアモリー税は嘘だったのか……と思ったが、
見張りは突っ慳貪に俺に告げて背を向けた。
「入れ」
踵で馬の脇腹を蹴り、町の門をくぐり抜けて進む。


いきなり不幸に襲われた。
警報が鳴り響き、嗄れ声が罵声を浴びせ……(中略)……
反撃する間もなく馬から引きずり降ろされ武器を取り上げられ
……(中略)……
一時間後には君の頭は断頭台の上に乗っていた。


「うッほほィィッッ!?」
何だこれはッッ!!
思わず頁から目を背ける。だが遅い。俺はまたしても『見て』しまっていた。
モリーに入ったばかりの、このパラグラフ129の末尾には……『次に飛ぶパラグラフが無い』―― ッッ!
だが、何故だ。
あれか。若造を撲殺して入手したからか。
違う。領主邸では金を払って通行証 を買う選択肢もあった筈。ならば、何故なのだッッ!?
―― 俺は覚悟を決めた。
ここで死ぬのは仕方ない。それは甘受するとしよう。
しかし、理由も分からず死ぬのは御免だ。あえて秘奥義を使わせてもらうッ!!
もしも、通行証 を持ってなければ、俺は無事にアモリーを通過できていたのか――
モリー到着時、パラグラフ96まで時間を巻き戻すッッ!


「秘 奥 義・ パ ラ グ ラ フ 逆 行!!」


―― またしても、疲労を引きずってアモリーの城門に立ち尽くす。
通行証 が無いと告げると、見張りは松明をかざして俺の顔をのぞき、次に馬を調べた。
バレッタかソーレーンから来たのか? どちらも遠いし疲れていることだろう。これからは通行証 を手に入れることだ。見張りの中には物分りの悪い奴もいるからな」
俺は見張りに礼を言い、アモリーの中へ進む。パラグラフ129へと……
そんな馬鹿な。


Q「通行証 があったから、死亡したのですか?」
A「NO! NO! NO!」
Q「通行証 がなかったから、死亡したのですか?」
A「NO! NO! NO! NO! NO!」
Q「もしかして通行証 に関係なく、ここに来た時点で即・死亡(オラオラ)ですかァァー??」
A「YES!YES!YES!”OH MY GOD”


かくて太陽神の顕現ソマースウォード すら奪われた狼は、鉄鎖と呪詛で幾重にも囚われた。
灰色の牢獄で、壁に張られた手配書に震えあがる。俺の人相書の触れ紙―― 「死刑」を命じる宣告書だった。
今わの際、断頭台の傍らに1人の男が進み出た。
天鵞絨の外套を纏い、傷痕の残る顔に見下す視線を浮かべている。
この瞬間、遙かな過去の、そして更に輪廻転生以前の記憶が甦った。



『俺はアモリーの貴族ロークだぞ―― 』。
『畜生、俺はアモリーの貴族ロークだ!覚えておけ!』



モリーの貴族ローク。
モリーの貴族……
モリーの……
成る程。ならば、この無謀なまでに傲慢な貴族は、遂に言祝ぐことができたのだ……
……復讐という名の美酒を。
喉の奥を猫科の猛獣のように鳴らし、陰鬱な相貌を残忍な悦びに歪めたロークの眼は滑るような光を帯びていた。
「ここでは俺こそが法律だ。死出の一時……絶望と恐怖を存分に噛み締めるが良い、北方人!」
永遠の黄昏界(ダ ジ ャ ー ン)に堕ちろ…ロオオオォォォォォクッッ!!!!」


絶叫と同時に、処刑執行人の斧が振り下ろされた。



『ローンウルフ9人目 再起不能(リタイア):死因 断頭台の露 →To be continued 』

(つづく)