ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ175→→→パラグラフ96:アモリー税:(死亡・9)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



前回のリプレイから24時間後。
天文台の地下通路をくぐり、俺はバレッタ西の雑木林で賢者の用意した栗毛に騎乗していた。
ちなみに体力点は25点、金貨は40枚据え置きだ。
あの後は強盗と戯れたり老グウィニアンから哲学的啓示を受けたりしたのだが、適度に省略。
という訳で……
月明かりのもと、地図を広げる。
前回はソーレーンから川海賊ルートを辿ったのだった。
ならば、アモリーに行くルートは?
百聞は一見にしかず、手綱を引き、煌々たる月下の街道を走りだす。


僅かな夜明かりを頼りに、一睡もせず南へひた走る。
地平線に朝日が昇り始め、小さな集落を駆け抜ける頃、飢えた野良犬が激しく吼えかかってきた。
ろくに餌を貰ってないらしい犬をガン無視し、ゴミだらけの通りを駆け抜けていく。
丘の間を縫うように街道を上ってゆく。
頂上に大きな建物が姿を覗かせ、じきに馬は衛兵に守られた領主の屋敷前を通りかかった。
風雨で擦れきった看板に変な一文が書かれている。



モリー税―金貨3枚


眺めること5秒。
……何を言っているのか本気で分からない。
周囲は茫漠たる荒野を街道が続くだけ、関所も料金所も無いのに、この張り紙は何ぞや?
拍車を入れて領主館に続く道を登っていく。
小塔のついた門をくぐり、凝った鉄細工が模様を描く小さな離れの前で馬を下りた。
頑丈な扉の上半分が音を立てて開き、覗き窓から胡乱な髪型の若者がこちらを見る。
「あん?だーれだ?ここは、どーこだ?」
「………………」
ハッパでもキメてるのか、こいつは。
先人曰く、「ハッパはキメてもキメられるな。ダメ!ゼッタイ!」という言葉もある。
同好の士の風上にも置けない頭の鈍さに苛立ちつつも、家人らしき若者に触れ書の意味を尋ねてみた。
若者は四角い青色のカードを見せ、逆の手を掌を上にして突きだす。
モリーの通行証 が無いんじゃねーのか。金貨3枚 だぜ」
「通行証の話はしていない」刺々しく言葉を返す。「モリーとは何か聞いているんだ」
「アモリーに入るための税金だろーが」
「!?」


「サロニーにはリリスとアモリーがあるんだ」
既に俺の怒りは爆発寸前、ある意味怒髪天を通り越したTHE有頂天ホテルの境地なのだ。
無論愚かな若者は、俺の怒りのオーラになど気づくはずもない。
空気の読めない若者は苛立った顔で一語一語区切って発音した。
「アモリーに……入る、には……通行証 が……いるん、だ」



通行証 を買いたければ金貨3枚 を払え。
男を無視して旅を続けるか。
男 に 礼 儀 を 教 え こ む か 。


来たァァァ!!
来てしまいました!仕置きという名の宴フラグ大発生!デバー御大のお墨付きでござりまする!
この狼が存分に仕置き仕りまする……ッッ!
「天・罰・覿・面!!!」
顔を近づけ、覗き戸の蝶番を掴み、渾身の力で若僧の顔面に叩きつける。
心の準備も何も出来ていなかった若者は顔面を木の厚板で一撃され、丸太のように引きつけを起こして後頭部から昏倒した。
扉の向こうで盛大な物音が起きる。
叩きつけた弾みで扉が開き、大の字に土下寝した若者が姿を現した。
額の中央部から仏塔のような突起が出現し、意識を失って痙攣を起こしている。
おお。有り難や有り難や………これは放置すると死ぬな。多分。
今日の日付がスタンプで押された四角いカード―― 通行証―― を奪いとってカイ・マントの隠しにしまう。
そんな訳で、俺は悠々と領主館を後にした。
ロハで通行証 も巻き上げたことだ。気分よく街道を進んでいく。
昼までに丘は地平に消え、代わりに雪を被ったセナー山脈が前方に望めるほど近づいてきた。
モリーはこの山脈の麓にあるらしい。
石の標識の置かれた分かれ道に差し掛かる。
馬を下り、上級狩猟術を駆使して山鳥を捕らえ、一休みしつつ道を選んだ。
北西へ向かえばソーレーン、南は変わらずアモリーだ。どちらも40キロばかり、馬を飛ばせば日没には着く。
通行証 を手にアモリーへ更に馬を進めた。
明日はセナー山脈越えの厳しい道程になるだろう。冒険者的には胸躍る展開だ。

(つづく)