ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ269→→→パラグラフ80:恐怖の主:(死亡・9)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


足取りも重く左の下水道に入っていく。
もはや希望も任務達成の望みも限りなく低まっていた。
太陽の剣を失った今、ソマースウォードの8点のボーナスを失った上に、丸腰のペナルティで戦闘力点は4点低くなる。
つまり、ここにいる俺は 戦闘力13点 しかないのだ。
100メートルほど進むと天井に覗く跳ね上げ戸があったが、地上に出ても無意味だ。更に通路を進んでいく。
罠が張り巡らされた迷宮で、何が正しいのか判断力も薄れかけていた。
あらゆる選択肢が怖い。
とにかく身を潜めて地下聖堂に辿り着き、ロアストーンだけ奪取して逃げだすのだ。
……そして、それが不可能だろうということも想像はついていた。
50メートルも進まぬうち、今度は別の下水道が本流に流れこんでくる。どちらも同じような風景で見極めがつかない。
本文から与えられる情報が極めて少ない。勘が頼りだ。




新たな下水道を探るか。339へ。
本流を進み続けるか。140へ。


またしても分岐路だ。汚水を掻き分け、新たな下水道、新たな地下迷宮に入っていく。
地獄のラビリントスが、延々とどこまでも続いていく。
だが、ようやく変化が訪れたようだった。
徐々に腰まで来ていた水かさが浅くなっていく。
やがて丸天井の部屋に辿り着いた。向こうの暗闇に穴があるのに気づき、入口で足を止める。




カルトの火の玉、たいまつ、火口箱 のいずれかを持っていれば、80へ。
これらをどれも持っていなければ、90へ。



胸をなでおろし、一息つく。
お約束ともいっていい事柄だが、この手の闇へ通じる迷宮で明かりがないのは即、死に通じる。
慎重に上着のポケットからカルトの火の玉 を取りだした。
金属の覆いを外すと、燃えあがる不変の炎が周囲を照らしだす――


床にある深く丸い穴を炎が照らしだした。
その穴にあるのは無数の人間の頭蓋骨と骨で、表面はまるで何か酸性の強力なもので
腐食されたように、奇妙なほどなめらかで黄色い。


そこは、おぞましい死の罠にかかった人間の処理場―― 『地獄穴』そのものだった。
微かな音が聞こえて肩ごしに振り向いた瞬間、恐怖がカイ・マスターを呪縛のように絡め取った。
今まさに大またに通路を近づいてくる……俺を『地獄穴』に叩き落そうとする『存在』。
悪夢めいた姿が、瞬く炎と闇の狭間に浮かびあがる。
太く捻れた節足。
カトラスさながらの鋭い鉤爪。
鱗に覆われ肥え太った巨躯は、蜥蜴と蜘蛛の邪悪な混合物だ。
そして、太古から人の命を盗み生き延びてきた、その狡猾な歳ふりた瞳が時折炎を反射させる。
一撃を食らった俺が穴に落ちていくと同時に、怪物は壁のレバーに鉤爪を器用に引っ掛けた。
異様な音が部屋に満ち、天井から黄色い豪雨が降ってくる。
……抗いようのない強酸の豪雨に全身を灼かれ、絶叫が喉を引き裂いた。


爛れた死骸となり、カイ・マスターがこの世から消え去ったあとも、巨獣はなお尾を打ち振り、運命を嘲る邪悪な哄笑を地下道に谺させていた。


君の探索の旅と命は、ここテカロの下水道で終わる。



『ローンウルフ9人目 再起不能(リタイア):死因 腐食性の酸により溶解 →To be continued 』
(つづく)