ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

花の都リューエンが出迎える

【パラグラフ297→→→パラグラフ231:リンリンランラン龍園:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ストーンランド諸都市の中でも、リューエンは花と葡萄酒の都市として知られ、その美しさゆえ多くの人々に愛されている。
堅牢かつ美麗な城壁の内側では、塔や木造の家々の窓辺を季節の花々が彩っている。
都市はセナー山脈の陰にあり、流れの速いストーン河がプリンダー山の危険な急斜面を切りとった、その曲がり角にあるのだ。
川船がゆっくりリューエンの岸壁に横づけし、そして、俺は――


「ククク……通らんだろう、ロルフ君……そんな話……」
「バ…バカなっ……」
「私の傭兵部隊は誰でもウェルカム……テカロまでの残金、私が支払ってやろう……」
「ぐっ……うううっっ……!」
墓石のように真っ白な歯列をのぞかせ、隊長が笑う。
この金の力……圧倒的……ッッ……!!
逆らえない……この人にだけはッ……
くやしい……ビクビクッ……!


そういう訳ですんでテカロまで船で行けることになりまった。ロハで。
川海賊との戦いで俺はすっかり腕を見込まれたらしい。
他の乗組員が汗水流して食糧その他の積み込み作業をしている間、隊長とともにリューエンの薬種屋を訪れることとなった。
巨大な石の壺が目印というこの有名店の品揃えはドゥレナーの薬草官にも引けをとらない。
軋みながら戸が開くと、広大な店内に並ぶあらゆるものに興味を惹かれた。
入口のショーケース裏には積みあげられた薬瓶の山。
カウンター脇の皿に盛られた用途不明な肌理の粗い粉の山。
木の根や薬草などが乾燥した状態で、あるいは油紙に包まれて、褪せた奥の木棚に詰めこまれているのだ。
隊長は、これからの戦いに備えて強力なコンバットドラッグを求めている。
渡されたリストの一覧を見て店主は死魚のごとき眼を爛々と輝かせた。
いずれも兵士を疲れを知らぬ鉄人へと変貌させる最高級の上物ばかりなのだ。
という訳で、早速俺も棚を見て回る。
川海賊との戦いで狼の体力点は16点。もし良さげな薬があれば……




 ラウンスパーの薬(体力点+4)金貨5枚 

 ガロウブラッシュの薬(1〜2時間眠らせる) 金貨2枚

 レンダリムの万能薬(体力点+6)金貨7枚 

 アレサーの薬(一時的に戦闘力+2)金貨4枚 

 グレーブウィードの濃縮液(飲むと死ぬ)金貨4枚



「ひゃわぁああああ!」
天まで届けとばかりに大絶叫する俺。
ハッパの天国は、バサゴニアだけじゃあなかったのかよ!!
カイの師匠は嘘つきじゃあなかった……ラピュタは本当にあったんだ!
「おい親父!」
「なんじゃい」
「この棚のここからここまで全部買う!」
両手で棚にへばり付き、もどかしく引っぱりだした金貨袋の中身をカウンターにブチ撒ける。



チャリン。
チャリン……チャリ〜ン……
そして、永遠の静寂。
言葉も無い俺と店主と、あと大口を開けた隊長の目の前で、燦然と輝く3枚の金貨 が転がりだした。
気まずい沈黙が店内を覆う。
「……ここから、ここまでなら、買えそうだね」
「……」
ようやくフォローに回った店主が親指と人差し指で一本分の幅を作り、小さな薬瓶を指さす。
―― ガロウブラッシュの薬 (効能:飲むと小一時間眠くなる)を。



金貨3枚 を震えて握りしめる俺はさながら縁日の餓鬼だった。
眩いほどに輝くお宝の山を目の前に、お代を払えず泣きじゃくる感じ。
う〜ううう…あんまりだ…
H E E E E Y Y Y Y
あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ!
AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!!
ディスられたッ!!
完膚無きまでにディスられたァァァ!!!!
悲しみのあまり3センチの空気供給管から脱出する俺。
「1時間で戻って来いよォ〜」
隊長の声を遠く聞きながら、傷心の狼は街を流離うことに。
マイケル・マドセンばりに洟を啜りながら近辺を物色するうち、ウィンドウにずらり武器を並べた一軒の店が目に止まった。



   デコミの武器店
 どんな武器も売買します


―― 今思えば、この店が更なる涙と錯乱を招いたのだった。
店内をのぞくと、鉄骨ならぬ凶器が乱雑に積み上げられ、倒壊寸前の建物を支えていた。
店の奥に武器ごとの値段がチョークで書かれていたのだが、一番大事なのはそのメニューの最下部。
「すべての武器を、販売価格の半額で買い取ります!?」
じゃ…じゃあこの太陽の剣を――
目前のハッパのために伝説の宝剣を差し出すが、王侯なら兎も角高すぎて買えやしないと一蹴された。
ならですよ。弓、あと矢筒と2本の矢。こいつは……?



弓―金貨7枚
矢―2本で金貨1枚


金貨7枚ッ!
レンダリムの万能薬一瓶がと引き換えかよ!
迷わず弓を売りはらい、金貨8枚を加えて11枚の金貨を手に飛びだす。
とはいえすぐに戻れる訳ではないらしい。
パラグラフの進行に従って通りを突き当たりまで歩かされ、背の高いハーフティンバーの店に辿り着く。
白い漆喰の壁にある窓からのぞくと地図屋のようだ。中でも3つが目を引く。
俺にとってはどうでも良いのだが、本文に書かれているのだから仕方ない。



ソマーランドの地図    金貨5枚
テカロの地図        金貨4枚
リューエンの地図     金貨3枚


ソマーランドの地図は高いねー。ラウンスパーの薬と一緒だよー(棒読み)。
だが地図が何枚あろうと鼻紙にもならないのだ。
全力疾走で薬屋へ戻り、カウンターに金貨を叩きつけて薬草を買おうと……


隊長の荷物は大きな木箱2つになったので、重い荷物を持つのを手伝う。
蹌踉めきながら店を出ると、隊長は一刻も早く船に戻りたいといった。


ゴゴゴゴゴ・・・・・・・


「へ?アンタ何言って……?」


部下は戦士としては優秀だが、船乗りの経験が無いので……(中略)……
しかし、隊長の心配は当たらなかった。
……(中略)……
『カゾナラ号』は既に準備を整え、出航を今か今かと待っていた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。。。。。。。。。。


「ちょwwwww おまwwwww 薬屋wwwそこwww俺買うだwwwww」
「錨をあげろwww」


隊長は川船の指揮をとることになったのが嬉しそうだwwwww
「夜までにはレムにつけるぞwwwww 」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・


んで。
いつの間にか川船の上にいる俺。
帆をあげてゆっくりと俺のガンダーラが遠く遠く地平線の点となって消えていく。
どうしてーッ!
なぜこんなに融通が利かないのよォォォーッ!!
やっぱり双方向ダンジョンゲームブックがいいよホホォォォーイ(谺しつつ船とともに遠ざかる)



かくて狼はを売り払い、地図も買わず、金貨11枚 を握り締めて呆然とするのであった……
およそこれほどの誤算が、かつてあっただろうか……

(つづく)