ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

歴戦の隊長は冷静に海賊をさばいていた

【パラグラフ286→→→パラグラフ297:血河を越えて #2:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



デルデン人の川海賊が腕を引き、弦のごとく筋肉が引き絞られ、今まさにナイフの一閃が投じられる。
練達のナイフ使いの標的は、回避不能な俺の胴体中央……真正面だ!!



上級狩猟術を身につけていれば、314へ。
身につけていなければ、142へ、


大気を貫き、唸りをともなう死の投擲が迫りくる。
だが霧をも見通す狼の眼は、煌めく刃の軌道を正確に捉えていた。
傍目には分からぬほど僅かに身を屈め、自ら刃に向かって踏みだし、左手を跳ね上げる。
体を開き、軽くナイフの腹を叩くと、ナイフは遙か後方へ飛び去った。
そこから5歩半、甲板を滑るように前進する。
驚愕の余り硬直した海賊の目が、今一度、裂けんばかりに見開かれた。
……胸板に脚をかけてソマースウォード を引き抜くと、海賊は後ろにのめり、冷たく暗いストーン河へ落ちていった。
上甲板の敵を倒し、梯子を伝って下へ降りる。
血塗れた道板に足を乗せた途端、背後から2人の海賊に攻撃された。



デルデン人の川海賊たち 戦闘力点18 体力点27


今度は2人だが、戦闘比は先刻と同じ+7だ。
雑魚どもがッ!狼の鋭い牙をキッチリバッチリ味わうが良いぜッ!!
月光蝶!ブォーッ!ギャーッ!」
超適当に叫んで乱数表にクンロクをかます……そして出たのが2、7、3。
まだまだ、完全復活は遠いのか喃(4点喰らって脳天から噴水のように出血、さかんに首を捻りつつ)。
ともあれ周囲を一掃して死体を乗り越え、甲板の向こうで5人の海賊と戦っている隊長を助けに行く。
隊長は右手に長剣を掲げ、数を頼みに包囲する短剣の群れを冷静にさばいていく。
戦闘用角笛が鳴り響き、デルデン人たちがどっと沸き立った。
新たなボートが横付けされ増援が乗り込んできたのだ。
咆哮しつつ跳躍し、隊長の背後を守るべく、新手の凶暴な海賊どもの只中へ飛び込む。



凶暴な海賊たち 戦闘力点20 体力点30


念撃が通用しないと言う記述を見るに、血臭に酔い、言わば忘我状態になっているのだろう。
だが、この狂戦士の群れを持ってしても戦闘比は+5。
今度こそ惑わされずに剣を振るう。




初撃は甘かったか、敵を斬り倒すものの刃を返す前に浅い傷を負い(乱数表5)、
続く数撃も腕を負傷しつつの乱戦となる(乱数表5)が、
遂に金色の刃が炎を集めて海賊どもの首を刎ね飛ばし(乱数表9)、
そのまま勢いに乗り、速度を乗せた真っ向からの薙ぎ払いで(乱数表9)周囲の敵をまとめて両断するッッ!!!



死体を踏みしだいて包囲の輪を崩したとき、戦いの天秤は既にこちらへ傾いていた。
圧倒的な数を殺された海賊たちは焦り、簡単に略奪できるものを物色するが、それを許す俺ではない。
一斉に退却を始めた敵を追い、濁った血の雨を降らせて文字通りの血路を切り開いていく。
遂に、傭兵隊長の手が逃げ出す寸前の海賊の首領の首根っこを吊るし上げた。
どんな抵抗よりも早くその手を振り下ろし、マストと手すりの間に頭蓋を叩きつける。
何度も叩きつけるうちに首領の頸骨は折れ、頭蓋骨とマストまでもが裂けると、隊長は声を放って呵呵大笑した。
「ふんッ!」
陽気に叫んだ隊長が死体をストーン河へ放り投げる。
「毎度のことだが、デルデン人は戦い向きの頭を持っておらんようだな!」
「何、なかなか景気の良い音を立てていたじゃないか」
返り血を浴びたまま2人で豪傑笑いを続ける。


襲撃は始まったときと同じように速やかに収束し、首領を失った生き残りは幽霊のように霧に消えていった。
海賊の負傷者に比べ、川船の犠牲者はあまりにも多い。
その多くが『カゾナラ号』の乗員など非戦闘員だった。
凶暴な手負いの海賊は甲板で始末されたが―― ただ1人は殺戮を逃れて逃亡した。
隊長の命令で死者の水葬と船の修理が行われ、置き土産の流木止めを取り除く。
最期の亡骸が暗い水の中へ沈む頃、嬉しいことに霧が晴れ、リューエンが見えてきた。
……俺の下船地だ。
ゆっくりと戦いの高揚が冷め、心が沈んでいく。
テカロはまだ遙かに遠い。
リューエンはストーン河の西岸にあり、この先はデュアドンか、或いは更に南のチョドまで進んで別の船を捜すしかないのだ。

(つづく)