ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

バレッタから南への道を探る

【パラグラフ175→→→パラグラフ102:ソーレーンへ:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



じっと夜を待ち続ける。
グウィニアンとブラス街の賢者たち。
危難をもたらしてしまったにもかかわらず、彼らはカイ・マスターを信頼し、手を貸してくれた。
その恩義には必ず報いなければなるまい。
やがて、天文台の時計が12時の鐘を鳴らし、俺は戸口をくぐって足早に走りだした。
乾燥した石の通路の果て、鉄扉を開くと、奇妙な暖かさと湿気の入り混じった風が吹き込んでくる。
更に狭い階段は、おそらく城壁の下をくぐるのだろう、ずっと下へ伸びていき手荒に掘られたトンネルへ通じている。
暗闇の中を歩きつづけ、再びつきあたりの扉を開くと、魔法のように雑木林の一画にでた。
グウィニアンの約束どおり、素晴らしい栗毛の馬が俺を認めて低く嘶く。
雑木林は南からバレッタへ通じる2本の街道の合流点近くにある。
いよいよ、ストーンランドでの狼の探索行は新たな局面を迎えることとなるのだ。


本の巻頭にある地図を見て、どちらに向かうか決めよ。

との言にしたがい、月明かりの下で地図を開き、ソーレーンとアモリー、どちらに向かうか検討した。
テカロは遙か南スロビアの北端にあり、リリスからサロニーへ縦断することとなる。
ソーレーンを経由して目指すなら、セナー山脈を抜けてレム、エウラ、そしてテカロへ続く。
道のりは遠いが、ストーン河沿いに船便があるかもしれない。
一方アモリーを抜けるなら、レム、エウラ、ウェドのいずれにも道が続くが、レムとエウラへの道は点線になっている。
恐らく道なき道を行くような展開になるのだろう。
……悩んだ末、俺はソーレーンへ馬首を向けて夜の街道を走りだした。



一睡もせず、夜通し馬を走らせつづける。深夜のこと、普段賑わう街道も今は通りすがる者とてない。
馬上に身を伏せ、一心に拍車をくれる。
月明かりに照らされたバレッタの沃野を駆け抜けていく間、渺々と吹きわたる風ばかりが唯一の旅の友だ。
朝日が昇るころ、目立たぬ集落の1つに辿り着く。
家々の扉はまだ閉ざされているが、そうしたなか、鍛冶屋の店先に佇立した若者の彫像が目を引いた。
近寄ると、台座の碑銘からこの像がビナール・ユペのものだと分かった。
盗賊を率いて隊商を襲い、殺人を含めあらゆる罪を犯したにもかかわらず、彼はこの地方の英雄であり義賊として扱われた。
それというのも彼は大胆かつ機知に富み、生まれ故郷の人々を襲うことは決してなかったのだ。
ユベと20人の仲間の悪業はアモリーでの死刑判決で幕を引いたが、その記憶は今もこうして根付いている。
像の脇には賽銭箱があり、彼の魂に敬意を払うものは盗賊や追い剥ぎから守られるだろうとある。
金貨を1枚、細い穴に放り込み、旅の無事を願って先へ進む。
徹夜で昼まで走り続け、豊かな大地と、それを汚す幾つもの戦争の傷跡を横目に通りすぎた。
人気のない集落を通り抜けていく。焼け落ちた小屋、黒く草の剥げた農場の跡地。
さながら風景に刻みこまれた黒い骸骨のようだ。
更に進み、街道沿いの教会に近づいた。
泥に汚れた襤褸を纏った男が、傷ついた鴉のように震えてうろうろと墓地の中を歩きまわっている。
馬の足音に気づき、男は教会の門まで出てきて大声で助けを求めた。




男を助けるか。337へ。
男を助けず、ソーレーンへ向かいつづけるか。173へ。
治癒術を身につけていれば、191へ。



俺は治癒術を身につけていない。
あと急いでいる。
もっと言うと面倒くさい。
そういう訳なので放っておいて先へ進んだ。
……いや、金持ちそうだったら助けたんだけどね。
狼に博愛精神を期待しようという方が間違いなのだ。
夜通し走りつづけて疲れているが、地図上の距離から行っても本来は2日かかる道のりだ。
夕方までにソーレーンに着くつもりなら、更にペースを上げねばならない。
午後の日差しの中街道を横切る浅い川が見えてきた。道をはずれて白く泡立つ浅瀬へ下りていき、そこで一時休息する。



  ソ ー レ ー ン ま で 40 キ ロ  .


グウィニアンから貰った食糧をありがたく頂き、馬に水をやってさらに先を急いだ。
夕陽が真横から俺の目を眩ませて沈んでいき、名残に赤らむ空を漆黒の天蓋が覆い尽くして……


遂に川の町ソーレーンが見えてきたのは、夜も既に更けたころだった。
ストーン河のただなかで無数の灯りが煌めきだし、交易で賑わう町の気配が夜遅い時間でも伝わってくる。
(つづく)