ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ158→→→パラグラフ175:バレッタのロアストーン:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



暗く長い秘密の通路は、墓場のように冷え切った静寂の地下室へ通じていた。
グウィニアンの指図で他の老人たちは地下室の奥へと走り、彼らが姿を消すと老賢人は暗い表情で俺のもとへ近づいた。
天文台の時計が夜中の12時を打ったら、そこの戸口から入り、通路に沿って行き止まりまで進むのじゃ」
地下通路は城壁の下をくぐり、地表に通じていると言う。
既ににこうした脱出路が用意してあることからも、おそらく、グウィニアンと賢者の一派はつねづね危険を感じていたのだろう。
「地表に出たところで、儂の仲間が脚の速い馬を用意しておる」
「感謝する、グウィニアン」
探索者である俺の存在が知れた以上、もはや一刻の猶予も無いだろう。
有り難く申し出を受けることにする。
「この地下室にある装備も、まあがらくたも多いが、役立ちそうなら好きな物を持って行ってくれんか」
手短に探って以下のものを見出す。



六尺棒
食糧3食分

銅の笛
ロープ
短剣


まあ、食糧とロープは持っておいて損はないだろう。
荷造りを進める俺に最後の一瞥をくれ、賢者が銀の鍵 (特別な品物)を渡す。
「お主の目的地で、ロアストーン を隠した棺を開く鍵じゃ」
「棺……だと」
俄に緊張し、俺は姿勢を正した。
古代の叡智は既に持ち去られ、その名を冠した古の都市にはなかった。
妨害派に奪われぬよう、彼らが隠したバレッタのロアストーン の在処が、遂に判明するのだ。
緊張を隠せぬ俺をみやり、グウィニアンがゆっくり口を開く。
バレッタのロアストーン テ カ ロ の地下聖堂に隠してある」
「な なんだって……」
一瞬、賢者の言葉が俺の頭を揺さぶり、混乱させる。
テカロ。
聞き覚えのあるストーンランドの都市の名を記憶から検索し……
そして不意に、すべての意図、すべての狙い、すべての伏線が繋がる。
困難な探索の向かう先が闇から浮かび上がった。
終局の地はここバレッタでは……ない。
ここまでの冒険が、カイ・マスターとして容易に克服しえた脅威の数々が、その事実を物語る。



―― 冒頭、クォーレンの宿でバレッタからの傭兵が何故か所持していたテカロの地図
―― 赤髭の話。傭兵隊長のふるった熱弁。
―― 始まりの街からあまりに近すぎる目的地の在処。
―― ストーン河流域の、最も肥沃な地をめぐる因縁の戦場。サロニーとスロビアの激突する最前線。



この不穏なる戦乱の国家群において、今最も激化の一途を辿る死域のただなか。
エウィビン王子率いるサロニーの大包囲網で埋め尽くされた、難攻不落の城塞都市の地下にバレッタのロアストーン は眠るのだ――

(つづく)