ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ211→→→パラグラフ127:狂信者たち:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



短く金髪を刈りこんだ傭兵隊長とともに戦争の話を聞く。
無論、今度もあえて無名の戦士『ロルフ』で通す心算だ。
相変わらず勝ち戦の自慢話が多く、儲け話や報酬の多寡が話題の大半を占めている。
南方で行われる戦争について隊長は熱心に説いた。
サロニーとスロビアの戦争は泥沼化し、城塞都市テカロはサロニーのエウィビン王子によって今まさに攻囲中なのだ。
軍曹の赤髭はソーレーンとバレッタを行き来しつつ、傭兵の補充を急いでいる。
「100人、いや1000人という単位での兵士が必要になる。それも熟達の戦士がだ……ロルフ、君のような」
「1000人単位とは、それほどの規模の戦闘なのですか」
「そうだ。テカロの攻略は極めて厳しい。だからこそ傭兵の活路があるのだ」
今度もまた隊長のスカウトは当然断るが、やはり、戦士としては心惹かれるものがあった。
手持ちの金貨は17枚。
3種類の部屋を前に少し迷い、フロントで金貨3枚払って二等個室の鍵を受けとる。
前回の1等個室は汚かったからな……あまり期待せず部屋に入る。


部屋は狭くてみすぼらしかった。
すりきれた絨毯の上にござが敷いてあるだけだ。


うォォォい!!
予想はしてたけどよォーッ!ひでェ部屋だったよォォォ!!!
でもまあ、屋根さえあれば寝るに不自由はない。カイ・マントを毛布代わりに眠りにつく。
夜半、瑞兆となる流れ星に目覚め、今度こそ探索を成功させることを願って眠りについた。
翌朝には体力点を1点取り戻す。
これで体力点は30点だ。治癒術が無い今、この1点が限りない重みを持つ。
軽く武者震い。今度こそ、この先が未知の領域なのだ。
先刻見かけた(リプレイ315参照)あの化物なんかがこの街の何処かにいたりするのだろうか。
ソマースウォード を確認し、早朝のバレッタを駆けてゆく。


馬はやがて、水音と聖歌ばかりが静かに響く街区――ブラス街 へ入っていった。
早朝ということもあろうが、このあたりは通りを歩く人々もまばら、いずれも静かなものだ……
だが次の刹那、俺は急制動をかけていた。


茶色の長衣を着てフードをかぶった老人が、白く舗装した通りを
滑るように歩いている。


茶色の長衣を纏った信者……
あの服装、間違いない。
忘れるものでもない。全身に喰い込む千もの刃の感触が甦る。
彼らこそ礼拝堂に集まっていたロアストーン反対派の狂信者たちなのだ。


前回は何気なく見のがしていた人影。
こんな間近にまで、妨害の魔の手は既に迫っていたのだ。
老人が視界から消えるまで注意深く待ち、俺は忍びやかに修学の建物へ入っていった。
図書室には向かわず、まっすぐ礼拝堂へ。
賛美歌にまじって説教をする男の声が響き、礼拝堂へ入るかどうかの選択肢が改めて示される。
……ああ。そうか。
こうして見れば、確かに前は迂闊だった。礼拝堂へ近づいてからの入るまでの段階が多すぎる。
真のゲームブッカーなら、その時点で警戒してよかったはずだろう。
そして、前回には知りようのなかった情報。


礼 拝 堂 へ入るか。226へ。
天 文 台 へ向かうか127へ。
上級狩猟術か予知を身につけていれば、195へ。


不意に危機感を覚え、男の声を聞かなければという思いに駆られる。
マグナカイの教えの力を駆使して気配と足音を殺し、俺は礼拝堂の扉に耳を押しあてた。



であるから、グウィニアンの愚かで危険な言葉に耳を貸さないようお願いする。
夜空に輝く星は、ロアストーン の秘密を守るよう我々に警告しているのだ。
我々はロアストーン を自らの邪悪な目的のため利用しようとする者を阻止せねばならないッ!


説教者の言葉が途切れた直後、礼拝堂が割れんばかりの声で揺らいだ。


「秘密を守れ! 秘密を守れ! 秘密を守れ!」


全身に悪寒が走る。
あらゆる叡智を集めた修学の場において、このような無知と迷信、そして狂信者たちが罷り通っているのだ。
「!?」
そのとき、錠が外れ、茶色の長衣を着た人々が廊下に溢れだした。



ロアストーン 探索妨害派の狂信者たちが礼拝堂からどっと溢れ出す。
瞬時に玄関まで走り、俺は柱の影に身を潜めていた。
殆どの者が四方に散るなか、とある一団がこちらに近づいてくる。
留まれば発見されてしまうだろう。
躊躇いなく、俺は近くのドアを開けて中に滑りこみ、狂信者から逃れた。
―― 更なる驚異が待ち受けているとも知らず。

(つづく)