ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ125→→→パラグラフ30:リアルシャドー講座:(死亡・7)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



居酒屋の喧噪の中、このテーブルの周囲だけが異なる気配に支配されていた。
ジョッキから手を離し、傭兵たちが実用本位な造りの剣に手をかける。
いかにも手練れの傭兵らしい仕草だが、俺がカイ・マスターとも知らず一戦交える心算らしい。
六尺棒を手に下げたまま、殺意を隠しつつ声をかける。
「随分と盛り上がっているじゃあないか」
ここでの選択肢は3つ。
酒を奢るか、会話の仲間に混ぜてくれというか、引き下がるか。
そうだな……取り敢えず様子見しつつ動くか。
「ビールでもどうだ?」
3人の兵士は互いに顔を見合わせ、次いで席を空けてくれた。
隊長格らしいジャガイモみたいな顔の兵士が指を鳴らし、大声で叫ぶ。
「姉ちゃん!可及的速やかにビール4つ!!!」
すぐに陶器に注がれたビールが女給の手で運ばれてきた。
それぞれが2リットルはある代物を、女給は蹌踉めきつつ運んできた。
額から滝のような汗を流しつつ、ヒィヒィハァハァと息切れしながら言う。


「金貨8枚を頂戴いたします」


何ですと!?
たかがビール一杯で金貨2枚も取る心算かァァ?
再び気まずい沈黙がテーブルを覆う。
城門の通行税といい、このボッタバーといい………いい加減払う気にもならない。
ならないが……ゲームブッカーの嗜みとして秘奥義を使っておく。
つまり払わない場合にどうなるか、戦いになるなら、事前に敵の強さを知っておこうという訳なのだ。


「秘 奥 義 ・ 指 は さ み ノ ゾ キ!!!」



「我々を侮辱する心算なのか!」
顔に傷のある男が立ち上がって叫んだ。騒がしい広間が一瞬、墓場のように静かになった。
……(中略)……
「かかれ!」
彼らは叫んで切りかかってきた。戦闘から逃亡することはできず、弓も使えない。

という訳で、目を瞑った零コンマ数秒の間に、俺の脳内でリアルシャドー開始!
カイ・マスターにとってこの程度の板垣マジックは児戯に等しいのだ。
『本気でイメージすれば、リアルシャドーでだって傷つくし、死ぬコトだってあるんだぜ……』
脳内で不敵に呟く俺。
抜刀した傭兵たちが号令一下、一斉に斬りかかってくる。




バレッタの傭兵たち 戦闘力点26 体力点35


  戦闘力点26  


―― マジっすか!?
ちなみに俺は戦闘力点21。
冗談抜きで彼我の差は戦闘比-5だ。
取り敢えず念波動を駆使し、毎ターン体力−2と引き替えに、戦闘比を−1まで上昇させる。
六尺棒を振り回し、立て続けに乱数表を指す。結果……1,1,7。
恐れていたことが起きた。
敵のダメージ13点に対して俺の手傷は12点。
+αで3ターン分の念波動の消費体力6点も上乗せし、実に18点もの大ダメージだ。
互いの残り体力点は、傭兵たちが22点、俺は風前の灯火の14点。
見る間に灰緑色のカイ・マントが鮮血に染まっていく。
ヤッベ!リアルシャドーなのに………勝てなくなっちまったァァ!!


「………………………………」
沈黙の中、俺の鼻血だけがとめどなく漏れだしていた。

(つづく)