ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

nacht_musik2006-05-06

【パラグラフ137→→→パラグラフ332:クォーレンの居酒屋にて:(死亡・7)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



夕闇の迫る街道に、カシオーンの紋章トアの木が描かれた農民の手押し車や商人の馬車が列をなす。
やがて、赤錆びた城門がゆっくりと開き、見張りの合図で行列が動きだした。
彼らとともにクォーレン市内に入っていく……と、馬首を塞ぐように二本の槍が交差して突き出され、脅すように揺れた。
横柄な口調で見張りが俺に告げる。
「街に入るには金貨3枚 が必要だ。金貨を払うか、さもなくば、ここから立ち去れ」



成程。
北門も南門も関係ないと。
要するにこの守備兵は腐りきった連中なのだ……殺すか?
本来なら選択肢を頭の中に思い浮かべた時には実際に相手を殺っちまって、もう既に終わってるところだが……あえて黙って金貨を支払った。
当然のことながらやや痛手だ。
だが街に入らないことにはバレッタのロアストーン を見つけだすどころじゃあないからな。
もう一度ここを通ることは無い……万が一にも無い……と思うが。
もしあるならば、9回巻き戻して10回殺す。
物騒な誓いを呟きつつも、兎も角クォーレンの街中に馬を進めていく。


商業と交通の要所、ストーンランドの玄関口だけあって、既に日没後だというのに活気があった。
広く峻険なクォール河へ下っていく大通りに面した家々や店の軒先には煤けたカンテラが下がり、屋根の高さまで立ち上った黒煙が空を濁している。
豪商の所有と思しき貨物船が河岸の船着場をずらり埋め尽くし、マストの先に商号や屋号を記した幟が翻る。
クォーレンの街は貨物船や艀で渡河できる最北の地にあたり、ゆえに自由都市カシオーン及びラストランド諸国双方からの交易路として発展し続けてきたのだ。
河を跨ぐ石橋の袂へと近づくと、やけに印象的な建物が目についた。
厩どころか離れまである随分と堂々とした造りで、中庭へと続く堂々とした門の上に、更に輪を掛けて堂々とした看板があるのだ。

  バレル・ブリッジ居酒屋

……今夜の宿はここにしろ、という作者からの無言の圧力だ。
前回の事もある。
敢えて逆らわない方が得策だろう。


門をくぐるとすぐに馬丁の少年が現れ、礼儀正しく手綱を受け取って厩に向かった。
丁重に案内された店内は、まだ宵の口にも関わらず混み合っていた。
厨房から肉を焼く香ばしい匂いが漂い、暖炉は赤々と燃えている。
旅籠の逗留客ばかりではなく、居酒屋としても賑わっているのだろう。
今日一日飲まず食わずだったことを思いだし、俺は旅館の中を見渡す。




席につき、食事を注文するか。172へ。
フロントへ行き、空き部屋がないか訊ねてみるか。232へ。
金貨を持っていなければ、91へ。
方向認知術か予知を身につけていなければ、346へ。



取り敢えず選択肢を吟味するのは生き延びるための鉄則だが……
「?」
この選択肢……どこか奇妙だ。

(つづく)