ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

彼の演説で群集の興奮は最高潮に達する

【パラグラフ272→→→パラグラフ254:扇動者アドゥー・コー:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



一陣の乾いた風が渦を巻き、不毛の涸れ谷に積もる赤い砂塵を舞い上がらせる。
……小さな砂嵐が鎮まると、イカレシュの街並が姿を現した。
ここは、イカレシュの東門前の広場だ。
玄武岩の石碑の上に、街の象徴でもある鷲が青銅の翼を休めている。
嘴に銜えた3本の矢が、それぞれ広場からの出口を指していた。

北へ向かい、ドウガ広場へ行くか。
西へ向かい、本通りへ行くか。
南へ向かい、イーグル外へ行くか。

「確か、カムシンはドウガ広場と言って……」
セイセイセイセイセイ!」
バネドンの馬鹿正直な発言を遮る。
歴戦の冒険者の勘から言って、ここでティパサに会えない事態はありえない。
絶対に彼は自宅にいるだろうし、ならば街を余さず歩いて金貨の1枚でも増やす隈無く調べるのが正解なのだ。
そんな訳で、カイ修道院創始者サン・イーグルにあやかりつつイーグル通りに向かう。
「お、おいってば、ローン・ウルフ?」
「大丈夫だバネドン。大体、カムシンの記憶自体が曖昧で当てにならない」
「それはそうかもしれないが……」
再び歩きだしたバネドンは俺に耳打ちした。
「よくよく気をつけろよ、ローン・ウルフ。砂漠の街は大抵いかがわしさの象徴だ。人を無邪気に信じるな」
邪心の無さそうなバネドンの顔をしげしげと見てむしろ感心する。
なんだかんだでこの魔術師も適度に世間ずれし、経験値を積んできたらしい。
「……へへ、へ……」
「何だよその顔は!何がへへへなんだよ!」
おお、どうやら不幸な誤解があったようだ。何か肩震わせて怒ってるし。
賑わう食堂街の前を通り、物乞いを無視し、武刃街を歩いていく。
なかなかよく鍛えられ、研ぎ澄まされた一点物が多いが、無論、太陽の剣には比べるべくもない。
食肉街を右に折れ、不意にそこでバネドンが立ち止まった。
古い泉のある広場に人が集まり、爪先から頭頂まで赤色に身を包んだ男の情熱的な演説に耳を傾けている。
「拙いぞ、ローン・ウルフ」
人目につかないトーアの木陰に俺を引っ張りバネドンが耳打ちした。
「あれはアドゥー・コー、古くからの敵であるテファの人々と流血の抗争を望んでいる男だ」
「テファ?……ここから西の街じゃないか。同じバサゴニア人同士で?」
「街道の通行料をはじめとした、数々の利権絡みの対立が続いているんだ」
バネドンが解説する間も、アドゥー・コーの熱弁はどんどんボルテージを上げていく。
突然、アドゥ−・コーが此方を指差して叫んだ。
「テファのスパイだ!…おう!」



「な なんだってー!?」
仰天している暇など無い。
血に飢えた聴衆の殺気だった視線が俺たちに突き刺さる。
何この展開、巫山戯てるの作者?



剣を振りかざして叫びながら走ってくる狂信者たちを説得するか。284へ。
バネドンに倣って走って逃げるか。340へ。


いや、もう選択肢からして変だ。
どう考えても「剣を振りかざして叫びながら走ってくる狂信者」は説得できねーだろ、普通。
でもってバネドンは何時の間に脱兎のごとく逃走してましたか!?
「早くしろー…ローン・ウルフー…」
遠くから谺する声。
前言撤回、世故長けてるじゃねーかバネドン……!
つうか俺を置いてくんじゃあねーぜッッ!!!


通過パラグラフ:(272)→342→227→388→216→  回復術の効果:+1点   現在の体力点:32点(全快)
(つづく)