ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

にやにやと笑う小人が姿を見せる

【パラグラフ323→→→パラグラフ392:お酒は20歳になってから:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



瞬く間に煙が後部甲板を包み込む。
爆音は不毛の平原に轟きわたり、翼に大穴の開いたクラーンが悲鳴を上げて落下していく。
船倉からひょいと小人が顔を出し、俺は事態を把握した。
彼らは精巧な武器職人としてマグナマンド全土に知れ渡った山の王国ボアの小人なのだ。
彼ら全てが手に持っている鋼鉄製の武器は、ボア銃、またはボー銃と呼ばれる。
ちなみに原語はBoa Pistol。日本語版では巻によって微妙に訳が違うので、どちらも載せておく。
単発式という欠点にもかかわらず、一撃必殺の殺傷力と轟音は戦場においては脅威となりうる。
恐慌状態に陥ったクラーンは、乗り手の意志に逆らい退却していった。
バネドンの操舵で船は上昇し、黒々とした南方の山脈の峰々と、V字にえぐれたダハール峠が見えてくる。
と、ここで不意に乱数表を要求された。
分岐は「0〜2」か「3〜9」らしい。出た目は5。
警戒しつつ次へ進む。



小人たちは、未だ戦闘の痕跡が残る甲板で撤収作業を行っていた。
マスト下に転がるドラッカーの死体を運ぼうとしたとき、不意にそいつが飛び起きた。
死んだふりをしていたドラッカーは、俺目掛け垂直に斧を振り下ろす――


……カイ戦士をなめちゃあいけない。
カイの第六感は既に罠の存在を見抜いていた。
更にカイの狩猟術が奇襲を紙一重で見切り、死角への移動を可能にしていた。
標的を見失い、たたらを踏む敵兵を小人のボー銃が吹き飛ばす。
最後のドラッカーが船外へ落下し、轟音に応えるかのようにバラキーシュで遠雷が轟いた。
俺を取り逃した帝都が、呪詛の叫びをあげているかのようだ。
今度こそ、俺は完全に追っ手を振り切った。



ようやく余裕ができ、バネドンの深傷を回復術で治療する。
大きな傷を塞ぎ、後は小人たちに委ねた。
有る程度回復したバネドンと今後の方針を相談し、俺は小人たちに連れられて夕食に向かう。
振り向き、船を高速飛行させるバネドンを見やる。
この飛行船『スカイライダー』の舵は、魔法の力で動いていた。
船の舵は数百もの切子面を持つようにカットされた輝く水晶球で、細い銀の杖の先に取りつけられている。
その水晶に手を乗せたバネドンはトランス状態となり、目を閉じた額やこめかみに、白いエネルギーが小さな雷めいた音を立てて複雑な模様を描いていた。
「心配は無用です、ローン・ウルフ」
「……そうか」
治療に当たっていた小人の1人、ノルリムが樽のような胴体を揺すってにこやかに俺を案内した。


後部船室では戦果に興奮した小人たちが殺したドラッカーの数を自慢し合っている真っ最中だ。
じきにテーブルには湯気の立つ料理が並べられ、香辛料に刺激されて猛烈な空腹感に気づく。
……考えてみれば、昼抜きだったのだ。
料理を貪り喰っていくが、眼前のボア・ビールを前にして俺は躊躇った。
ボア・ビール
俗に『キティguyビール』『間抜け殺し』『棍棒で脳を殴打したような』などと形容される危険的劇薬飲料。
あまりの強さゆえ、ときに幻覚作用さえ起こす特級指定火気厳禁の違法酒類なのだ。
実際マグナマンドの多くの地域でこのビールの取り扱いは禁止されているというから半端ではない。
当然、断っても失礼にはあたらないだろう。
だが……これは、カイ戦士の気概を見せつけてやる絶好の機会ではないか!?
賑やかに飲んでいた小人たちが、大ジョッキに伸びる俺の手を見て静まりかえる。
大きく傾けて喉に流しこみ、リンゴの香りを漂わせたコクのあるビールを一気に飲み干した。
心を鎮めて、暫し待つ。



――予想通り、それはやってきた。
乱数表での一発チェック…………って、7以上を出せだとォォ――!?
だが本文をよく読めば、体力点が全快しているので数字に2を加え、さらにセイバントの階級まで達していれば+3。
おお、どうにかなりそうだ。乱数表を狙って――



「0」が出ますか、ここで。
(つづく)