ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

長いおひげがチャーミング

【パラグラフ166→→→パラグラフ54:呼吸を止めて1秒あなた真剣な目をしたから :(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



腕を揉みほぐすが、感覚は全く戻らない。
リムデスに感染している間左手は使い物にならず、戦闘力点を3点失い、どんな盾も使えなくなる。
つまり、俺の攻撃力は事実上−5点のペナルティを受けるのだ。
唯一の幸運はマオウクたちを振り切ったことか。
生暖かい吹きつける風に顔を向け、蛇行する下水の縁石を歩いていく。
次第に熱気を帯び始めるのに気づいた。
蒸気で充満した前方の部屋に入っていくと、急に歩道が途切れ、3メートル下に沸騰した池があった。
小部屋の下に広がる巨大な地獄の釜は、『タール・ソーク』と呼ばれる間欠泉だ。
バサゴニアにはこの手の間欠泉が至る処にあり、人々はその蒸気を生活に役立てている。
間欠泉の鳴動は『タサ・ドフェイム』――「揉み合う神々」という意味だ――という名の小さな地震を絶えず引き起こす。
このタール・ソークにも二本の煙突が伸びていた。
石を削って造られた煙突の内壁がちょうどいい足場になり、登っていけそうだ。
右手と両脚を使い、煙突を登っていく。
蒸気が肺を痛めつけ、顔や手が軽い火傷を負い、体力点を1点失う。
だが、それらは序の口に過ぎなかった。
何かが体を這い上がってくる。
間欠泉に棲む蜘蛛の巣を破ってしまったのだ!



スチームスパイダーたち 戦闘力点10 体力点35
念撃は通用しない。片腕を使えなければ、戦うことはできない。


おぞましい感触が体を這い回る。
タール・ソークに落ちたくなければ、痛みをこらえて登るしかないのだ。
乱数表1回分……6点もの体力をスチームスパイダーに奪われ、辛うじて俺は煙突を脱出した。
蜘蛛の残りを払い落とし、狭い通風孔のなかを這い進んでいく。
出口に嵌った鉄格子を、両脚で蹴り開ける。
そこは偶然にも最重要施設の裏手だった―― つまりは、公衆浴場だ。


「おきゃああああッ」
番台に座る男は獣のように叫んだ。
「お前はバクナーより臭いぞ!」
「……ホーミターイ!!!」


男の反応を無視し、俺は容赦なくがっぷり四つに組んだ。

…。
……。
………。


そんな感じ。
再び悶絶する男を放置して、個室の浴槽に服ごと飛び込む。
極楽だ……左手さえ麻痺してなければ。
今度は回復術もあるので紫色した半透明の陶器を調べる。
これはラーヌマ油だ。
ラーヌマの木の実は、バサゴニアでは一般的な食料だが、精製した油は鎮痛薬にもなるのだ。
蜘蛛に噛まれた小さな傷に塗り込み、体力点を2点取り戻す。
……この油を塗っていたら、前の冒険は死ななかったかもしれない……。
取り留めもなく思う。
カイの回復術の恩恵の深さを思った。
なにしろ、浴場をあとにする頃には、先ほどの7点分のダメージが完治しているのだから。


通過パラグラフ:(166)→55→162(戦闘)→114→90→6→103→71→ 回復術の効果:+5点   現在の体力点:32点(全快)
(つづく)