ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

シャーナジムの追っ手がにじりよる

【パラグラフ187→→→パラグラフ166:リムデス:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



冷汗を流しつつ、カイの知識を脳裏に甦らせる。
こいつは精神攻撃に特に弱いのだ。
カイの動物語を用いて脅かし、カワラズーを追い払う。
角を曲がって姿が見えなくなってから暫くして、断末魔の叫びが上がった。
不運なシャーナジムがカワラズーに生きながら喰われているようだ。
竦む脚に喝を入れ、先に進んでいく。
やがて道は更なる三叉路に出た。より広い下水道が南北に延びている。
カイの第六感が北はカワラズーの巣だと告げたため、自殺行為を避けてこの新たな下水道を南へ向かう。
進んでいくと急に幅が広くなり、丸天井の地下室に出た。
地下室の中央には排水管が下りてきており、油の浮いた水から僅か1メートル程のところで切れている。
真下には大量の残飯が沈殿し、水面に腐肉の臭いを撒き散らしていた。
地下室に入りかけたとき、床が無いのに気がついた。
部屋の向こうに続く下水道との間には、幅20メートル近い汚水のプールが出来ている。
追っ手の水飛沫が迫ってくる。
ロープがあれば渡れないこともないが、この状況下では汚水を泳ぐか、合流点まで戻るしかない。
仕方なく戻りかけたその時、3人のシャーナジムが現れた。
剃刀のように鋭い三日月刀が煌めき、血に飢えた刃が俺を狙う。
……ここで戦えば、確実にマオウクの罠に嵌るだろう。
腰までの水を蹴散らして助走をつけ、一呼吸だけ肺に酸素を送りこんで汚水に飛びこんだ。
汚水とも腐泥ともつかない澱みの中で、しゃにむに手足を動かす。
どうにか泳ぎきり、縁石に上がった体ががたがたと痙攣していた。
片腕の自由が効かない。
鉄格子で傷ついた肩が刺すように痛み、肩から先が痺れて役に立たないのだ。
この症状の原因に気づいたとき、二重の戦慄が俺を包みこんだ。



リムデスの症状が現れている。
肩の傷がバガ・ダルーズで発見された恐ろしい疫病の一つ、リムデスに冒されているのだ。
カイの教えでは急速に進行するリムデスで腕が腐るのを防げない。
治療法はただ一つ。感染した傷口を20時間以内にエデ の薬草で癒すことなのだ。
それができなければ俺は左腕を失い、運が悪ければ命も落としてしまうだろう。
というのも、バガ・ダルーズにエデ はないからだ。



湧き上がる恐怖。
そして同時にささやかな勝利の実感があった。
前回通れなかった「病気フラグ」。
エデ 入手に必須の「病気フラグ」こそ、このリムデスなのだ。
これで至高の治療薬エデ 入手の為のチキンレースに名乗りを上げたことになる。
賭け金は俺自身の命だ。

(つづく)