ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ182→→→パラグラフ152:拷問室と外壁と狼:(死亡・5)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



やがて高い丸天井の部屋に出た。
扉近くの棚には、幅広剣 がある。
狙い澄ましたように俺の得意武器である斧は無い。
北側にはバサゴニア風の過度な装飾が施された蹄鉄型のアーチから別の廊下へ、南には大きな扉がある。
……というかですね?



・通路を進むか。132へ。
・扉の中の様子に耳をすますか。115へ。


耳をすますって何だよ!
中に入る選択肢は無いのかよ!
興味津々じゃねーですかクラァァ!!!
好奇心に負けて耳を押し当てる――
途端響きわたるフルボリュームの拷問サウンズ。
具体的に言うと焼き鏝の音とか脂肪が煮える音とか。
病的な笑いと啜り泣きとか裏声の限界に挑戦してみました?風の悲鳴とか。


チッキショ騙されたー!!


流石のアウトローであるところの俺も震え上がり、宙を翔て北の廊下に向かう。
北の廊下は西へ向かうファサードとぶつかった。
遠くに眩しい光が明滅し、灼けた鉄を水に突っ込む音が響く。
ハンマーで金床を打つ音も聞こえ、どうやら間違いなく鍛冶場のようだ。
用も無いので静かにやりすごす。
更にアーチを幾つも抜けていくと、今度は食器のぶつかる音が聞こえてきた。
衛兵の声が重なっているところから察するに、食堂があるようだ。
戻るのも面倒だし、どうしたものだろうか。
ここでの最善の行動を考えていたとき、突如パトロール隊の衛兵が背後の廊下に姿を現した。
即座に床を蹴って窓の出っ張りに飛び上がり、アーチの陰に身を隠す。
だが門のアーチは狭く、兵士たちが通りかかれば見つかるのは確実だ。
打つべき手は2つ。
・更に宮殿の外壁にある狭い空間に身を乗り出して隠れるか。
・衛兵が通りすがった瞬間に攻撃するか。
攻撃こそ最大の防御だろう。
だが襲う覚悟を決めたとき、カイ・マスターに次ぐ戦士の階梯であるセイバントとしての経験が警鐘を鳴らした。
ここは食堂に近すぎる。
戦いの騒音は兵士たちにすぐ聞きつけられてしまうだろう。
音をたてずに窓を抜け、僅かに突きだした外壁の足掛かりに踵を乗せ立ち上がる。
風雨に晒された壁面に背中を密着させ、視線は決して下げない。
先程見た宮殿の中庭と庭園が、今度は遮る物も無く爪先の真下に存在するのだ。
唇を噛み、窓枠の傍らで衛兵たちが通りすぎるのを待つ。
だが、彼らは去ろうとしない。
それもその筈、黄昏が近づき、衛兵は窓を施錠して回っていたのだから。
油の切れた窓の蝶番が軋むと音高く閂が閉ざされ、丸屋根に預けた背筋が冷たくなった。
聞こえるのは吹き荒ぶ風音のみ。
はみ出した爪先の数十メートル下で、空気が渦を巻いているのが感じられた。
じきに陽が暮れ、強い海風がここまで吹きつけてくる。


だというのに。
地上数百メートルの宮殿の外壁に締め出されてしまったのだ―― !!

(つづく)