ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

巨鳥に乗ったバサゴニア人戦士

【パラグラフ223→→→パラグラフ59:ルアノンの戦い・その4:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



落とし戸を開け屋根に飛び出した俺は、惨状に凍りついた。
屋根一面に、引き裂かれたソマーランド兵士の死体が転がっている。
その上空では、惨劇の張本人――バサゴニアの巨大な騎鳥、イチカーが舞っていた。
立ち籠める煙の中でも巨大な翼は力強く羽ばたき、剃刀のように鋭い爪は人体を易々と切り裂く。
巨鳥の背中の鞍には鉄の鎧で着込んだ戦士が座し、ソマーランド兵の血に塗れた三日月刀を握っていた。
宝石のついた鐙から脚を下ろし、一呼吸置いた戦士は悠々と監視塔の屋根に飛び移る。
「太陽神にでも祈れ、狼!間もなくお前は死ぬのだ!」
「祈った甲斐があったぜ」
怪訝な顔の戦士に、俺は叫び返す。
一個小隊を全滅させたこの前振り、そしてイラスト付き、さらに登場から戦闘まで1パラグラフの猶予がある敵。
……間違いない。
こいつこそ、バサゴニア騎兵団の指揮官――この局面での最強の敵だ。
鉱山で入手したラウンスパー を一気にあけ、体力点を13点まで取り戻す。
俺はソマースウォード を片手で掲げ、残る片手で挑発的なジェスチャーをした。
「御託はいい。かかってきな、おっさん」
「いい度胸だ、若造」
応じて剣を掲げた野蛮な顔に不気味な笑みが張りついた刹那、バサゴニア人の呪詛が、物理的な衝撃となって脳を揺さぶった。
こいつも、俺と同じ――念撃の使い手なのか!



バサゴニアの隊長 戦闘力点22 体力点28
精神防御を身につけていなければ、毎回体力点を1点失う。
戦士に念撃は通用しない。


こちらの念撃が通用しない隊長格相手のため、戦闘比は±0。
カイの精神防御のおかげで追加ダメージこそ防げるものの、互いの地力――体力差を考えるとかなりの不利だ。
慎重に剣を振るい、血で滑る屋上を周回しつつ有利なポジションを探る。
一度は脇腹に浅くないダメージも喰らったが、剣を撃ち合わせること四合の後、クリティカルの一撃が隊長の顔面をざっくりと両断した。
こちらの体力は 残り6点
極限の戦いに幕が下ろされる――
致命傷を受け、蹌踉めいたバサゴニア人は屋根を乗り越え、下の戦場へ落ちていった。
戦士が乗っていた巨鳥は、恐ろしい鳴き声を暗い空に轟かせ、何処かへ飛び去っていく。
血に濡れた屋根に、美しいめのうのメダル が転がっていた。
戦士が落としたものらしい。
めのうのメダル を懐にしまい(特別な品物に数える)、俺は再び監視塔を駆け下りた。

(つづく)