ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

マントレットが平原を迫ってきた

【パラグラフ124→→→パラグラフ223:ルアノンの戦い・その3:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



車輪のついた攻城用の大盾――マントレットが、死体を挽き潰しながら防壁目掛けて近づいてくる。
正確無比の矢の驟雨も、悉く防がれてしまう。
突如、マントレットの背後から飛びだした敵兵が黒い筒を防壁に向けた。
彼は矢に倒れたが、死の寸前に発射された火球は尾を引いて戦場を飛び越え、耳を聾する爆発を巻き起こした。
防壁が粉々に吹っ飛ばされ、埃と破片のベールの向こうから、横一線に敵の騎兵が突撃をかけてくる。
羽根飾りのついた真鍮の兜をかぶり、深紅の鎧をまとった精鋭たち。
おそらくはバラカ直属のバサゴニア騎兵。
強敵だ。
防壁の残骸を乗り越え、いましも騎兵の一人が槍を構えて襲いかかってくる!
俺の体は反射的に動いた。


―― つまり、戦いを避けたのだ。


臆病風じゃあない。
バラカとの対決に備え、体力は極力温存する……逃げながら言っても説得力ないけどね!!
そういう訳で必死に逃走を図るが、所詮俺も人の子。
いかな俺の美脚が全力疾走したところで、悲しいかな、馬の脚は俺の倍、つまり四本あるのだ。
みるみる距離は縮まり、弓を番えた味方の兵士にぶつかりそうになる。
「しゃがめ!!!」
本能的に弓兵の声に従う。



声と同時に放たれた鋼鉄の矢尻が、林檎を串刺しにするかのようにやすやすと騎兵の兜を貫く。
死んだ騎兵を乗せたまま馬は走り去り、礼を言う間もなく弓兵は防壁の残骸に向かった。
踵を返し監視塔に向かう。
あと10メートルのところで、不意に槍の柄で殴りつけられ、転倒した。
突きだされる槍を転がってかわし、立ち上がる。
馬を失ったらしい敵兵は、悪人面を歪めて槍を繰り出した。



バサゴニアの戦士 戦闘力点18 体力点25


戦闘比は+6。
何度か際どい局面に――2と4の境界線を指したとか。こうした場合はどちらか分からないので乱数表を指し直す――。
冷汗を流しつつも、クリティカルの連続で斬り殺す。
無傷で監視塔を駆け上った。
2階では、二人の兵士が壁の隙間から矢を放っていた。
突然一人が悲鳴を上げ、矢の生えた胸を押さえ蹲る。
今回、カイの回復術を持たない俺は彼を救えない。
代わりに壁の矢筒から矢を抜き、弓の弦をぴんと張った。
カイ戦闘術にはむろん弓術も含まれる―― ただし、それは10の教えをすべて修めたカイ・マスターならの話だ。
つまり、弓矢での戦いは、これが初の実戦ということになる。
目標は……武器を失ってバリケードから転落した無抵抗の兵に襲いかかる馬上の敵……ッッ!!
集中し、心を沈め、番えた矢を引き絞って放つ!



矢は槍を振りかざした山賊の腕に突き立った。
悲鳴を上げつつ落馬した敵兵は、さらに自分の取り落とした投げ槍に串刺しとなり絶命した。
「お見事です、カイ戦士」
肩を並べた弓兵に鼓舞され、再び矢を番えたその時、黒い影が空を横切った。
何者かが監視塔の屋根に降りようとしている。
ここを占拠されたら味方は挟撃されてしまう!
弓を捨て、俺は階段を駆け上った。

(つづく)