ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

バシュナの復活が真の目的だったのか

【パラグラフ57→→→パラグラフ327:暗黒の儀式:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



そうだ……この詩は……
この旅の初めに、奇妙な隠者が手渡した巻き物 に記された、不気味な予言詩……
「おお!彼女を救ってくれ!!カイ戦士よ!!!」
「一体誰を救うのですか?」
「勿論、攫われた私の娘マデロン以外の誰だというのだ!!!」
興奮のあまり喉を詰まらせた男爵はデュバル隊長に宥められつつ、苛立ったように手を振り払った。
充血した目に新たな涙を溢れさせつつ、俺が広げた巻き物 と同じ予言詩を呟く。



寺院のはるか上空で満月の輝くとき
いにしえは眠りより目覚める
長い間忘れ去られた君主の軍団
祭壇で美しい王家の娘が死すとき
マッケンゴーグの死者たちは立ち上がり
長年待ち続けた復讐をはじめる


「まだ分からないのか!バラカは暗黒の聖遺物、バシュナのナイフ を見つけだしたのだ!!!」
「……バシュナのナイフ ?」
「そうだ!奴は王家の娘をマッケンの祭壇に生贄として捧げ、マッケンゴーグ峡谷の悪霊を解き放とうとしているのだ!」
これまでの冒険が脳裏を駆け巡った。
そして幾つもの不可解な謎が氷解した。




・なぜ街道沿いの貧しい一帯まで制圧し、住人の虐殺を企てたのか。
・なぜ、王家の血筋を引くバナランド家が標的になったのか。

そして、


『運 命 殺 し』という二つ名の由来は、何なのか。



バラカの目論見は、鉱山を占拠し私腹を肥やすことではない。
かつてソマースウォード によって滅ぼされたダークロード・バシュナの「運命」を「殺し」、無かったことにする。
最強最悪のダークロード・バシュナの復活。
それこそが『運 命 殺 し』の目的。
バラカを追放したバサゴニア帝国への、そしてラストランド全土への復讐。
暗黒の英雄とその眷属が甦ったならば、いかなる定命の軍隊が彼らに抗しうるというのか。


―― すべての線が、ここにつながった。
俺は黙って男爵を見つめた。
これは時間との戦いだ。
バラカが生贄の儀式を完遂すれば、すべては終わってしまう。
先んじてバラカを倒し、バシュナのナイフ を奪還せねばならない。
それも、次の満月の晩までに。
「マデロン嬢は必ず助け出します。カイに誓って」
「おお……頼むぞ」
部屋をあとにしつつ、デュバル隊長が身を震わせる。
「なあ……ローン・ウルフよ」
「…………ああ」
「俺は男爵が狂ってると思って、彼の話を信用していなかったんだ……だが、ここ数日の出来事は……」
「……最悪の事態を示しているな」
太腿の傷が疼く。
この痛みをバラカにも、分かち与えてやらねばならない。
それが、祖国を蹂躙された狼の復讐の手始めとなるだろう。


その時、甲高い角笛の音が響いた。
防壁の銃眼からルアノンの荒野を見渡した隊長が顔色を変え、俺を促す。
「山賊だ!奴らが攻撃を開始した!!」

(つづく)