ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

すべて灰燼に帰した―領地も城も家族も

【パラグラフ116→→→パラグラフ57:ルアノン包囲戦:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「国王は大規模な捜索隊を送りこむと思っていたよ。この街にはもううんざりだ」
デュバル隊長は苦笑いした。
粗末な藁のベッドから起きあがり、俺は真摯に礼を言う。
「カイ戦士のまあ、その……勇敢さは語り草でな、兵士の士気もあがるぞ」
お互いにここまでの任務と状況について、情報を交換しあう。
「山賊どもは裏切り者のバサゴニア貴族の手下だ。『運命殺し』とは、はッ!」
隊長の口調は苦々しい。
「バラカは次のバサゴニア帝位を狙う禿鷹に過ぎん。それが政争に破れ、一転してこのルアノンを襲ったのだ」
現バサゴニア老帝には嫡子がおらず、王位継承を巡っての暗闘はつとに知られている。
とすれば、バラカは単独でこの地に居座っていることになる。
「敵の数は多く、苦戦を強いられた。どうにかルアノンまで辿り着き、それ以来包囲されている」
「50人や100人ではどうにもならない数か」
「ああ。我々が援軍を待っていたのは事実だな。武器はあるが、食糧と水が十分ではない」
「深刻な状況ばかりか―― 町の人々は?」
「大半は鉱山で奴隷として働かされている。お前以外であの鉱山を生き延びたのは一人だけだ。来たまえ、紹介しよう」
監視塔の最上階の部屋に連れられ、鉄枠がついた扉をくぐった。
目を伏せ、隊長が言う。
「このルアノンの領主―― オレン・バナランド男爵だ」



オレン・バナランド男爵。
ルアノンのバナランド家は第五代ソマーランド国王を輩出した名家であり、オレン男爵はその第十五代目にあたる。
騎士の鑑とされ仁政を敷いたこの誇り高い領主が、今は狂犬のように目を血走らせ、冷たい床の上で譫言を呟いている。
「領地も城もすべて灰燼に帰した―― そして家族まで」
同情の念をこめてデュバル隊長が呟く。
「二人の息子も殺され、一人娘も攫われた。バラカは男爵のすべてを奪い、遂に彼の心を壊したのだ」
男爵は涙に濡れた顔を上げ、微かな声で詩の一節を何度も囁いた。



祭壇で美しい王家の娘が死すとき
マッケンゴーグの死者たちは立ち上がり



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。


こッ……
この歌……この詩には、聞き覚えがあるッッ……!!

(つづく)