ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

老人には不思議な存在感があった

【パラグラフ160→→→パラグラフ273:予言詩:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



油断せず、小屋の中に入る。
机に置かれた水晶球を覗いていた老人が顔を上げた。
薄暗い室内はどこか黴臭く、図面が散乱し、奇妙な器具が処狭しと並ぶ。
おそらく占星術師――天文学に関する図面や書物のタイトルからそうと知れる――の小屋といった風情だ。
「俺の名をどうしてご存知なのですか、ご老人」
「星たちが我らの出会いを遙か古より予言しておったのじゃよ、ローン・ウルフ」
皺だらけの手で水晶球を撫で、老人が答える。
促されて正面の椅子に座りつつも、俺はいつでも動けるように備えた。
「なに。警戒することはない。儂はただ、お主の手助けをしたいだけなのじゃ」
羊皮紙の小さな巻き物を上着から取り出す。
差し出された巻き物を受け取った俺は、ちらちら燃える暖炉の火のもと内容に目を通した。




寺院の遙か上空で満月の輝くとき
古の眠りより目覚める
長い間忘れ去られた君主の軍団
祭壇で美しい王家の娘が死すとき
マッケンゴーグの死者たちは立ち上がり
長年待ち続けた復讐を始める



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。



不気味な予言詩だった。
マッケンゴーグ。
ルアノン南の大峡谷。
かつて最強のダークロード・バシュナが太陽の剣に滅ぼされた地。
その場所で死者が立ち上がる……?
長年待ち続けた復讐とは、一体……
「ご老人……この詩は何なんだ?何を意味しているんだ?」
思わず語気も鋭くなり、詰問調で尋ねたが返事はない。
老人は深い瞑想に入ってしまったようだ。
散らばっている机を飛び越え、老人を揺り起こそうとする。
その手が、老 人 の 体 を す り 抜 け た 。
「な……」
絶句する俺の前で老人の輪郭が靄のように揺らぎ、薄れ、やがて完全に消えてしまった。
特別な品物 として巻物 をカイ・マントにしまい、小屋を後にした俺の額には冷や汗が滲んでいた。
何が起きているのか。
俺の推測が間違っていたというのか。
組織化された山賊が鉱山を占拠している……困難ではあるが、山賊を撃破するだけの、単純な任務ではなかったのか?
この意味深な邂逅は、一体何をもたらすのだろうか――

(つづく)