ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

R.I.P

【パラグラフ332→→→パラグラフ222:R.I.P:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



馬車の輪の外は漆黒の闇だった。
夜陰に紛れたつもりなのだろうが、だとすれば男はカイ戦士の力を舐めている。
カイの追跡術は彼の足跡をたやすく見つけだし、大きな馬車の梯子まで俺を導く。
既に俺の五感は鋭く研ぎ澄まされていた。
すらりと腰の幅広剣を引き抜き、油断なく構えつつ扉を蹴破る。
「ひいッ」
無様な男の悲鳴を耳にするより早く、俺の視線は馬車の隅で毛布を被った男を見出した。
揺れるロウソクの光が、男の顔に恐怖の班紋を浮かび上がらせている。
「二度は問わない。その剣を、お前は何処で手に入れた?」
「あ……わ……」
「なぜ逃げた?疚しいことがあるからか?」
「ち、違います。エシュ、エシュナー で買いました」
男は怯えつつも答えた。
「エシュナーだと?」
「本当です。『ピック・アンド・ショベル』 居酒屋の主人からです。まさか本物だとは…盗品だとはつゆ知らず……」
この動揺ぶりからも、そして盗品だと勘違いしていることから考えると、男は嘘を言っているわけでは無さそうだ。
震える手で刃の方を持った男は、俺に剣を返そうとする。
「貴方様のものだとは知らなかったのです。どうか、どうかお許し下さい。そして、この剣をお持ちになって下さい」
「……」
ふと胸騒ぎにかられ、俺は鞘の無いその剣の鋼鉄製の柄を握りしめた。
ほとんど反射的に、彫り込まれた銘に目が行く。
血の気が引いた。



紛うことなき本物のソマーランド軍の刃には、所有者と来歴を示す銘が刻まれていた。
見事な細工で彫りこまれたその銘は、墓石に刻まれたR.I.Pのごとき衝撃で俺を殴りつけてきた。





【 レ ミ ー ル ・ デ ュ バ ル 隊 長 ―― 国 王 近 衛 連 隊 】


(つづく)