ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ182→→→パラグラフ332:奇妙な芝居:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



馬車を半円形に並べて即席の広場を作り、野営地を張る。
普段であれば行軍の過程に過ぎないのだが、今日は芸人、楽団入り混じっての華やかな野営となった。
食事と寝床の準備をする一方、広場の片隅にちょっとしたステージを組みあげていく。
夜の帳が下りる頃、準備が完了した。
隊員を交代で周囲のパトロールに向かわせ、他の兵士らは期待に目を輝かせてステージの前に座っている。
やがて華やいだ音楽が鳴り、舞台衣装を纏って壇上に上がったイェスが芝居の題名を読みあげた。
「これよりご覧に入れまするは苦難にあって光明を守り通した者たちの物語、題して……」



ソマーランドの勇敢なる戦士たち!




芝居は即興と思えぬほどの出来だった。
そもそもホルムガードでの公演に備えて準備されたものだろうか。
笑劇あり早変わりあり活劇ありと十分な内容の芝居は隊員たちの絶賛を浴び、副官の二人までも任務を忘れて楽しんでいた。



だから、気づいたのは俺一人だけだと思う。
奇妙なことに、役者の一人が本物の剣で立ち回りしていたのだ。
……それも、ソ マ ー ラ ン ド 軍 騎 兵 士 官 に の み 許 さ れ る 剣 を使って。
芝居が終わり、あちこちで喝采が起きるなか、俺は楽屋裏でその役者に近づいた。
「一つ質問がある。お前のその剣はどこで入手した?」
「……」
「答えられないのか。なら、その剣を見せてもらいたい」
男は苛立った目で俺を見返すと、きびすを返して広場を囲む馬車の外へ逃がれた。
どういうことだ?
躊躇わずあとを追う。

(つづく)