ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

4巻表紙 この生き物は!?

【プロローグ:消えた輸送隊:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



白と金で統一された王の間。
そこにあるものすべてが沈黙を守っていた。
直立する俺の前で、ウルナー王が背を向け、何事かを思案していた。
「ローン・ウルフよ。そなたの歳を教えてくれまいか」
「はあ。今年で18になるっす」
「本気ッすか!?」


「………………」
「………………」


「あの戦争から4年か……若きそなたあってこその、今日のソマーランドの復興ありと言えような」
にぎわう王都ホルムガードを窓から見やる王の言葉には感慨がこめられている。
暦は既に5054年。
ボナター捕縛からも3年が過ぎ、戦争の傷跡も癒えたソマーランドは平和と繁栄を享受していた。
カイ修道院も再建され、俺自身、研鑽と修行の日々を送っていた……こうして、王からの召喚を受けるまでは。
ややあって決断を下したのだろう。
向き直った王の顔には、いつもどおりの揺るぎない威厳が溢れていた。
「そなたを呼んだのは他でもない。このところルアノンで奇妙な事件が続いておるのだ……」



ソマーランドの南に位置する鉱山の町ルアノン。
ダーンクラッグ山脈とマッケン山脈の陰気な頂に挟まれたこの一帯は、鉱物資源に恵まれた裕福な地域だ。
誇り高き領主バナランド男爵の庇護のもと人々は勤勉に鉱山で働き、豊富に掘りだされる鉱石はソマーランドの重要な収入源になっている。
月に一度、厳重に警護された荷馬車隊が、採掘された鉱石を都へ運ぶ。
これまでこの輸送は途切れることがなかったのだが、一ヶ月前、ルアノンからの連絡が途絶えた。
ただちに近衛兵の中からデュバル隊長率いる騎兵隊が選抜され、派遣された。
ルアノン街道は【襲撃者の道】と呼ばれ、時にジャークや山賊の襲撃を受ける。
今回も当初はそう思われていた。
行方不明の荷馬車隊はすぐに見つかると考えられていたのだ。
……予想に反し、デュバル隊長も、それどころか騎兵の一兵たりとも、戻ってはこなかった。
輸送隊と同様、跡形もなく消えてしまったのだ。



「いまや、そなたが最後の切り札だ。ルアノンでの異変を突き止め、この不穏な秘密のベールをはぎとってもらいたい」
「………………」
「余としては心苦しいのだが、今もダークロードは侵略の機会をうかがっており、あまり多くの兵を割けないのだ。そなたには国境警備隊から一個中隊、選りすぐりの 偵察兵50名 を率いてもらいたい。難しい任務になることと思う」
王の視線が揺れているのに気づいた。俺を気遣ってくれているのだ。
いつものように膝を突き、頭を垂れ、王に答える。
「仰せのままに、わが王よ」
満足げに王がうなずく。
―その直後、視線がこわばり、背筋を震えが駆け下りていった。
王の背後で、大鴉が矢のように窓をかすめ飛びすぎたのだ……ホルムガードで忌み嫌われる不吉の象徴が。
不意に、もっとも大事なことを聞き逃したことに気づく。
50名の偵察兵を率いてなお多くの人員を割けなかった とは、どういうことなのか。
「一つうかがいたいのですが……デュバル隊長の騎兵隊は何人いたのですか?」
「デュバルは自ら精鋭を選びだし、ルアノンに向かったのだ」
王の視線が、さらに曇った。






「…… 1 0 0 名 ほ ど
「……本気すか」

(つづく)