ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

フェナー。超笑顔

【パラグラフ103→→→305:くさい しぬる(ダイイングメッセージ):(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



3日目は朝から強い風が吹き、平坦な氷原だったリューク氷棚は、幾重にも層をなす氷塊の厚板に変わった。
何時間も氷雪の入り混じる突風を浴び、顔には薄い雪の膜が張るほどだ。
狭い氷の回廊を通り抜け、ようやくホロド盆地につながる氷棚の縁で突風を凌ぎ、一息ついた。
そのとき金切り声が響き、数秒もたたずに3頭のバクナーが、俺とイリアンの橇目掛けて氷壁から飛び降りてきた。
避難所を求める生き物が、人間の他にもいたのだ。
橇から投げ出されたイリアンが氷上に叩きつけられ、気絶した。
バクナーはカルトに棲息する大型肉食獣だ。
そして、厳しい自然の掟は格好の獲物(ぶっちゃけイリアンのことだ)を見逃したりはすまい。
俺は躊躇なくソマースウォード を抜き放った。



バクナー 戦闘力点19 体力点30


戦闘比+7
一年ぶりにふるう太陽の剣の威力は、極北の地でも健在だった。
二撃目にして乱数表0――クリティカルだ。
無傷のまま踏み込み、深い獣毛に覆われたバクナーの心臓に黄金の刃を突き立てる。
重い地響きをあげ倒れるバクナーから目を戻すと、フェナーに松明の火を押しつけられた残り2頭が逃げていくところだった。
バクナーは火が苦手なのだ。
「さすが、手馴れたも……」
太陽の剣を鞘に納めつつ振り向き、そのままの姿勢で俺は硬直した。
フェナーはこの野獣の死体を喉から腹まで裂き、毛皮を剥いでいく。


ゴゴゴゴゴ.........


見る間に、バクナーの独特の強烈な悪臭が大気を汚染した。
人間でさえ気分が悪くなってくる。
ついに犬たちは臭いに耐え切れず、雪の下に鼻面を突っ込んで悶え苦しみ始めた。
「……アンタ何やってんだオイィィィ!」
「え?何ってバクナーの毛皮を剥いでいるんです。ほら」
にこやかに返事をかえすフェナーが、ダイスと一緒になって野獣の死体から悪臭の原液をすくいだす。
バクナーの体内に蓄えられていた、ケダモノの脂そのもの。
ネットリしたゼリー状の脂が大気に触れ、この臭いを嗅ぎ続けるぐらいなら腐ったチーズで鼻栓したくなるほどの激しい獣臭が漂う。
2人のガイドは、白い毛皮の下からドロリと溢れだしたその濃厚な悪臭の塊を、理解し難い視線で見つめ、


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 。。。。。。。。。。。



顔全体に、鼻の頭にッ、コッテリした原液のまま塗りたくり始めたッッッ!!!

(つづく)