ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

ヘルガスト 最悪の『不死』

【パラグラフ176→→→277:『不死』の来襲:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ハマーダル山の頂きを遙かに望み、三日三晩、ドゥレーン谷に沿って街道を走り続ける。
地形の起伏は激しく、昨夜などドゥレーン河まで37メートルも落差のある滝近くにキャンプを張った。
翌朝のことだった。
キャンプ跡を発とうとした時、森の上からフードをかぶった6人組が下りてきて、馬で行く手を阻んだ。
「ただの強盗の類ではなさそうだな」
「そのようです提督。どうされますか」
「斬りかかるわけにもいかんだろう。面倒だが」
敵の数のほうが多いにもかかわらず、言葉をかわす提督と部下に焦りの色はない。皆、それだけの手錬れなのだ。
にもかかわらず、俺は押し寄せる奇妙な感覚に戸惑っていた。
馬で進み出たライガー提督が名乗りをあげると、朗々としたその響きが山河にこだまする。
「この者は急ぎの用で国王の元に行かねばならない。道を開けよ」
「…………」
「言うことを聞かぬなら、我々の剣がお前たちを斬るぞ」
ドゥレナーでは、国王の使者を邪魔するのは反逆罪にあたるのだが、彼らは耳を貸さず、退く素振りもない。
その瞬間だった。
カイの第六感が閃き、胸を押し潰さんばかりのドス黒い悪の雰囲気に、俺はようやく彼らの正体を悟った。
「仕方あるまい、全員突撃せよ!道を開け!!」
「駄目だ提督ッ、攻撃をやめるんだ!奴らは全員――
抜刀した総督が攻撃を命じ、俺の絶叫は突撃する人馬の喚声に掻き消される。



「ダークロードの不死者、ヘルガストだァァァァッッ!!!」



「……ソノトオリ、ダ」
敵の一人が、フードの暗がりで嘯いた、ような気がした。
その胸には既に……先陣を切った部下の剣が、深々と斬り込まれているというのに。
総督の部下は真実、剣の達人だった。
動揺で手元を狂わせることもなく、疾風怒濤とでも形容すべき無数の残撃がフードの男を襲う。
だが斬られた刀傷はみるみる再生し、痕ひとつ残さないのだ。
斬り刻まれていたヘルガストが血も凍る叫びをあげる。
とたん、部下の背中を突き破って黒い幅広剣の刀身が生えてきた―― 性質の悪い冗談のように。
ダークロードの高位の不死者、ヘルガスト。
彼らは殺した者の姿を奪い取り、人間に成り代わる。そして、この怪物に傷を負わせられるのは、魔法の武器のみだ。
覚めない悪夢に戦慄する間もなく、敵の一人が黒い杖を取り出した。

(つづく)