ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

商人 ハルボーグ

【パラグラフ168→→→314:ゆらりワイルドランドの旅 血煙殺戮キャンパス(ry・後編:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「フゥムゥーン……私が御者の代わりをやりますよ。パックス港へは通いなれた道ですから」
「助かるわ。お願いね、ハルボーグ」
名乗りでたハルボーグが、図体に似合わず身軽に御者席によじ登った。
御者の亡骸を埋葬する。事故死を目の当たりにし衝撃を受けた牧師は、神経質に指を握りしめていた。
「御者の死は、私たちの責任ではない。私が保証する」
「カミノ……オミチビキ、ダ」
一行を安心させるかのように、ギャノンとドリアがいつになく厳粛な面持ちで宣言する。
「ホワイトマウンテンの騎士は決して嘘はつかない」
「……真の騎士の誓約、だっけ?」
ビベカの言葉で思いだした。ドゥレナーの騎士はたとえ自分が不利になろうとも、真実しか語らない。
それは広く知られた事実であり、正義と公正を体現した騎士の証なのだ。



海辺の村ゴーン・コーブ。
社会のはみ出し者や泥棒、スザール(ワイルドランドに住む、弱く気質のおとなしいジャーク。人間と共存している)が流れ着く宿場村だ。
夕刻、どうにか俺たちはこの村までたどりついた。
「宿を見つけました。混んでましたが、部屋も確保できそうですよ」
「牧師様の誠実そうな物腰が効いたんでしょうな。ささ、皆さん参りましょうか」
戻ってきたパーションとハルボーグに連れられ、今夜の宿『フォーローン・ホープ』へと向かう。
鄙びた外観と裏腹に宿は賑わい、夕食の匂いが立ち上っている。
宿賃に金貨1枚を払うが、なぜか俺だけ向かいの離れに。
「もしかして離れは怖いんじゃない、ロルフ?」
「へ、へえ…夜中に目が覚めても寝床から抜け出せそうにねえですだ」
「フゥーン。でも替わってなんかあげないわよ。せいぜいシーツに地図を描かないようにするのね」
ようやく一同に笑いが戻る。
「ともかく、一時間後に食堂に集まろう。今後どうするべきか考えなければ」
ギャノンの提案に肯き、俺は一人階段を上がっていった。
「ソマーランドってどんな国? ドゥレナーと同じくらい興味があるの。今の季節はどんな感じなのかしら」
「長閑な国で、冒険者には退屈でしょう。フェーマーンの祝賀祭も賑わいましたよ」
ビベカの問いにパーションが答えていた。
祝賀祭……か。
扉を閉め、喧騒を外に締め出す。唐突にケルマン船長の言葉が甦った。

―― 我々の中に裏切り者がいる。
―― 命を懸けて君をドゥレナーに行かせまいとしているのだ……

ごったがえす宿。俺一人だけ遠い部屋。同道していた乗客もいない。
俺を襲うつもりなら、今が最大の好機だ。

(つづく)