ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

見事な彫刻の駒が盤面に並ぶ

【パラグラフ12→→→78:『サモア』勝負:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



盤面を前に、俺は手の平にじっとりと汗をかいていた。
船長はともかく、俺にとって金貨10枚 は全財産の四分の一、失うわけにはいかないのだ。
乱数表の上で何度も迷い、一点を指す。
数字は6、第六感を習得しているので2を加え、その結果は……8だ。


「おめでとう、ローン・ウルフ。流石だな……君の腕前は素晴らしい」
深々と椅子にもたれ、船長はしわの寄った額の汗をぬぐった。
「ところで中盤で守りに転じた君のあの一手。あれはブラフだったのかね。それとも」
「想像にお任せするよ。デュバル隊長得意の手なんだ」
勝った。
完璧に盤面の流れを制し、鮮やかな勝利だった。
意外に小さな船長の財布から金貨10枚 を受け取り、勝ち逃げにならないよう明日の再戦をこちらから申しでる。
苦笑いして船長は了承し、俺は挨拶を言って船室に引き上げた。
しかし、その明日は、無かった。



夜明けとともに凄まじい暴風雨が『グリーン・セプター号』を襲った。
船室にまで水が流れ込んでくる状況に跳ね起き、荷物をかきあつめて甲板へ飛び出す。
俺の腕を船長がつかみ、船室を指さし、耳が潰れるほどの風雨の中何かを怒鳴っていた……
そして再びの落雷が、マストを真っ二つにする。
乱数表は1。カイ戦士の本能で俺は飛びすさっていた。
その刹那、鼻先をかすめ、折れたマストが凶暴な顎となって甲板を噛み砕くッ!
横殴りに叩きつける風雨に足をとられ、辛うじて甲板にしがみつきながら俺は見た―――マストの下敷きになった、船長の亡骸を。
「………ケルマン船長ォォォ!!!!!」
勝ち誇るように吼え猛る嵐が、俺の絶叫をかき消した。
いまや船材のすべてが軋みをあげていた。
連鎖的に亀裂が広がり、分解した甲板から海に投げ出される。
二度目の大破。やはり、この嵐は防ぎようがなかったのだろうか……?
鎖帷子 をどうにか脱ぎ捨てて浮上し、体力点1点を失いつつ、流れてきたハッチカバーによじ登る。
灰色の曙光の中、波間に没していく『グリーン・セプター号』を見ているうち、俺の意識は遠のいていった。

(つづく)