ゲームブック・リプレイ:ローン・ウルフシリーズ

nacht_musik2005-07-18

【パラグラフ287→→→12:パックス港へ:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



念力移動を使い、小さな真鍮の錠前に精神を集中する。
とはいえ単に小石を動かすのとは訳が違う。
実際に見えていない錠前の内部構造に働きかけるには、道具を使った錠開けの訓練は勿論、より強力な精神集中が必要となる。
―――数秒後、カチリと箱が開く。
中身は巻物だった。
ソマーランド国王の紋章入りで、俺をドゥレナーへと護送せよという極秘命令がしたためられている。
船長は味方だ。
元通りにしまう途中、箱に仕掛けられた致死性の毒を塗った針に今頃気づく――カイの教えがなければ死んでいた。


甲板では、いましも幽霊船をめぐる騒動が終わったところだった。
毅然とした船長を見ながら乱数表を指す。
結果は5。前回とは反対のパラグラフへ飛ぶ。
「パックス港まで三日かかるのは皆も知ってのとおりだ」
ケルマン船長の言葉に、船員たちが水を打ったように沈黙する。
「だが、強い風が吹き、皆の勇気と努力をもってすれば2日で行けるだろう。火事で食料が焼けたので食事は一日一回、水の樽には見張り番を置く。以上」
ざわざわと不満げな呟きが聞こえたが、あえて異を唱える者はいなかった。



夕刻、ケルマン船長と船員らの両方から食事に誘われた。
結局、船長の誘いに乗る。裏切り者が潜む船員との食事には不安があったのだ。
船長室での食事は極めて質素で、俺は空腹から体力点2点を失った。
「すまないな、本当に食料の備蓄が残り僅かでね。私だけ特別待遇とはいくまい」
謙虚な言葉が、むしろ俺の信頼を強める。
食後、船長が取り出したゲーム盤に俺は目を輝かせた。『サモア』だ!
「その顔をみると、君もこのゲームを嗜んでいるね」
「ああ。ホルムガードではデュバル隊長に随分カモにされ……いや、こつを教わった」
「近衛隊長じきじきの弟子か!これは楽しそうだ」
サモア』とはチェスのようなゲームで、高度な戦術と巧みな心理戦がものを言う。
船長が少しだけ金貨を賭けようと言ってきた。
無論、俺とて依存はない。
金貨10枚 を賭けることに同意し、海の漢とカイ戦士の一騎打ちがここにはじまった。

(つづく)