ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

nacht_musik2005-07-01

【パラグラフ300→→→240:ホルム湾〜カーランディン海峡:(死亡・2)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「すまなかったな。君一人で来たものだから、部下が密航者と間違えたようだ」
「気にしないでくれ、ケルマン船長」



船長室に通された俺の前にいるのは、赤い髪と髭を厳めしい顔に生やした、まさしく海の古強者だった。
非常に強い酒、ワンローをグラスに注ぎ、俺に勧める。
ワンローを啜ると、ようやく緊張がとけた。
ロナンの死と襲撃について語ると、ケルマン船長も俺と同じ結論に達したようだった。
「誰かが裏切ったようだ。私の名前はおろか、待ち合わせの手順まで知られていたとは」
「この一件、船長はどう思う?」
「君は先行する有利を失い、私は優秀な一等航海士を失った……ということだ。今は何事もなくドゥレナーへ着くことを願うばかりだ」
甲板へ上がった俺は潮風に吹かれ、水平線に消えていく王都ホルムガードを見守った。
王都を見る者に共通する誇らしさと同時に、先行きに暗雲が垂れ込めているのを感じる。
再び、この風景を目にできるのだろうか。
ホルム湾をあとに『グリーン・セプター号』は北マグナマンドの海に乗りだした。
ここで乱数表が指示される。行き先は5つと幅広い。結果は8だ―― 指示されたパラグラフへ飛ぶ。


翌朝、見張り台からの大声で目が覚めた。
狭い階段を上がっていくと船長が厳しい顔をして立っている。
「左手に船がいるらしい。若い君のほうが視力がいいだろう。ローン・ウルフ、確かめてくれないか」
飾りのついた望遠鏡をのぞくと、赤と黒の帆が彼方に見えた。
南海を荒らし回るラクリの海賊だ。
みるみる近づいてくる海賊を前に乱数表を指す。
出目は……6。逃げ切れるのか。


俺の不安を察したのか、ケルマン船長が語りかけてきた。
「この船は速度も速く、船首も尖っている。北海でこの『グリーン・セプター号』に追いつける船はないはずだ」
船長の言葉通り、じきに海賊船は水平線の向こうに消えた。
ほっとして俺は船長に笑いかえす。だが彼は眉を顰め、顎髭を撫でていた。
「私は25年間も船に乗っているんだ、ローン・ウルフ。その話はしたかな」
「ああ。昨日聞いたと思う」
「だが、ラクリの海賊がこんな北まで進出しているとは知らなかった。貴重な積荷を略奪するために、南海から長期間航海してきたに違いない」
……ケルマン船長は船長室に戻ったが、俺はひとり甲板に立ち尽くしていた。


貴重な積荷 とは、俺のことではないだろうか。
(つづく)