ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

暴れん坊マダム

【パラグラフ319→→→200:黒狼誕生:(死亡・1)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



避難民でごったがえす街道を見やり、俺はすくんだ足で森の陰に立ちつくしていた。
悪夢の再現だ。じき彼らがクラーンに襲われると知りつつ、合流して彼らを守る勇気さえ俺には無い。
弱くて卑怯、自分が大事……バネドンから渡されたペンダントが胸に痛い。
潜伏して森の中を進むと、岩陰に兵が倒れていた。
「助けてくれ、カイ戦士。腕の感覚が殆ど無いんだ」
聞き終わるより先に深い傷を見て背筋が凍った。
普通の手当てでは間に合わない。重症だ。回復術がなければ……そこで青ざめる。
「頼む、治療、を…」
その言葉を最後に兵士は意識を失った。
本来、カイ戦士はその戦闘の技だけでなく、戦場における治療のエキスパートでもある。だから彼も救いを求めたのだ。だというのに。
なんて……役立たず……
どうしようもない……カイ戦士のクズ……なんてダメなんだ……俺……!!
そのとき、奇妙な声を耳にしたような気がした。*1




どうせ長生きできない虚弱体質なんだから、精一杯生きればいいじゃな――い(占い師っ面で)
やりたい事をおやんなさいよ。どうせ死ぬなら悪の限りを尽くすの。さもないと地獄に落ち(以下自粛



プチン。
電波の受信が切れると同時に、くるりと世界が反転した。
「そうか……そうじゃんよなァァ」
すげー分かった気分になって、今や岩石さながらに腫れ上がった後頭部におわします暴れん坊マダムを、ビリケン様の足裏のごとく撫でる。
やべぇーよぉォォ………!
なんで気づかなかったんだよォ、俺………!
正義を貫けない弱者なら、悪の限りを尽くしてやればいいんだよぉォォ………!!!
夕焼けに染まった街道を商人の馬車が走ってくる。その光景が、俺のなかの記憶を刺激する。
「金…そうだ金だよカネ!マニーマニィマニィィ!!!欲っっしいぃぃなぁァァ!!!!!」
そんな生き様もありだろう。
シンプルに悪の道に走ってみろ、ローン・ウルフ!!!



次回、壊れた俺が国民(くにたみ)を襲う!!
(つづく)

*1:たぶん俺の中の人がつけっぱなしのTVをうわのそらで聞いていたのだろう