影のオンブリア(ISBN:4150203822)

(パトリシア・A・マキリップ、ハヤカワ文庫)

「この世で一番、古い都」
「この世で一番、きれいな都」
「この世で一番、力のある都」
「この世で一番、豊かな都」

「オンブリアの影の都はオンブリアと同じだけ古いのです。ほんとうはつい先ごろまで、オンブリアのそばにあったまったく別の都だとも言われています。そのうちに通りや門や古い家々が、時とともに溶けて、もうひとつの都もにまじりあっていったのだと。いいえ、そうではなくても、どちらも同じ時代、同じ時期にあって、日々その両方を歩けるのだという話もありますのよ。通りを下っていくと、光を通り、影を通り、また光を通り………」


光と影のふたつの世界が重なる都――オンブリア。
前大公の愛妾リディアは、オンブリアを我が物にせんと企む女摂政ドミナ・パールによって宮廷を追放される。
だがそれは、幼君カイエルとその庇護者デュコン、さらに影の都に住む魔法使いをも巻き込む陰謀劇の幕開けに過ぎなかった………。
『妖女サイベルの呼び声』に続く2003年度世界幻想文学大賞作。