崑崙の王(ISBN:4191536850)

夢枕獏徳間書店
天を望んで堕ちたのだ―――
フリードリッヒ・ボックに敗れ、流浪の身となっていた龍王院弘だったが、寒風吹きすさぶある日、偶然そこで奇怪な事件に巻き込まれる。
長野山中の黒伏村。地方有力者の久我沼家は呪われていた。先代当主・羊太郎の犬神憑きを落すため招かれた“祟られ屋”九十九乱蔵。
一方、久我沼家への復讐に燃える一党…呪詛を操る謎の老人・寒月翁と奇妙な少年・茂、そして多代という女。図らずも彼らの小屋に身を寄せる龍王院弘。
そして事件の元凶である“贄師”紅丸が、久我沼家に請われやってくる…。


作者の獏ちゃんによると『闇狩り師』シリーズでありながら、キマイラ外伝『キマイラ青龍変』だという本書ですが。
主役が天才・龍王院弘。

「もし、ぼくに、敵がいるとしたら――」
龍王院弘は、自分のジャンパーのポケットから、そろりと右手を引き抜いた。
「それは、ここにいるのですよ」
自分の胸を、その人差し指で示した。

<龍の咆哮篇>の後半、贄師紅丸の外法により、瀕死のまま獣人化し龍王院弘を襲う多代。雪中での戦いの末、多代は意識を戻すも弘の名をつぶやき透明な涙を流して絶命する。
しんしんと雪が降るなか龍王院弘は立ち尽くす。
足もとに倒れる女の体から白い雪に紅い血の輪が広がってゆく…。

そして龍王院弘は“変る”。

己がためだけに生きてきたこの格闘の天才は、この時初めて自分のためではない、他者のためのもの…を身のうちに宿す。

そして終幕での、ボックと同じ技“鬼勁”を操る紅丸との凄絶な死闘…。


そんな感じ。
文庫版も絶版らしいのですが、古本屋とかで見つけた子はゲットしておくとよいでしょう。