隠し剣秋風抄(ISBN:416719239X)

nacht_musik2004-08-15

藤沢周平、文春文庫)
新装版が出ていたので『孤影抄』ともども読むよ。
中学生の時分に読んでいた本なので相当久しぶりに読むわけですが。
オモシローイ。
中身は剣客を主人公にした各一話完結の短編集。
なので主人公は色々出てきますが、隠し剣の遣い手だからといって、連中の人生に別に特典とかはないです。
というか隠し剣の要諦が「楽して人を殺す」ために編み出された必勝の殺人剣*1なので、それ以外には何の役にも立たない。
そもそも主人公たちは、殺人剣が遣える以外は凡庸な普通人なので、世間の荒波に対して人並み以上の対応は望むべくもなかったりします。
登場する隠し剣の数々は、戸部新十郎とか鳥羽亮あたりの秘剣ものと比べても、かなり荒唐無稽な代物なんですが、そこは藤沢周平
深い余韻を残す筆致で手堅くまとめています。
この『秋風抄』だと『盲目剣谺返し』が一番好きですね。

*1:要はズル。ジャンケンの後出しばりの扱い。