オンライン小説

nacht_musik2004-06-22


実は最近いわゆるオンライン小説というものを、あちこちで見て回っているのです。*1
概ね中高生の手になるものが大半のようで、語彙の貧困さや考証不足が目立つ作品が多いというのが正直なところですが。
しかしながら、いみじくも「ネットは広大だわッ」という箴言の示すがごとく、中にはこの朕をして、真摯に、本気で、この小説に惚れ抜いて紹介するダァァ!!・・・という作品もないではないのです。

例えばファンタジージャンルのこんな作品。

ビオラインリード

ttp://beoline.web-zz.com/novel/nindex.html

(トップページは ttp://beoline.web-zz.com/)

彼女、『さくら』は、これまで様々な世界に「存在」してきた。それぞれの
世界で、別々の名で呼ばれ、別々の人物の人生を経てきた。──木之本。春日
野。真宮寺。アヴァロン。ゴウティエ。任意。御影。

(中略) 

 だが、そのうち、今のさくらが最も慣れ親しんでおり、──この地下城塞の
光景をさくらは改めて見回して感じたことであったが、──さしあたって、こ
の場で最も多く使う羽目に陥るであろうものは、「逸刀流(いっとうりゅう)」
の大小表裏の法形と立合抜刀の術だった。

(中略)

岡崎正宗によく似た作風の、しかしよく寸の伸びた刃──井上真改である。
様々な”影”においてさくらの手に慣れた、『蟲殺』と呼ばれる差料だった。

──『さくらと髑髏の都』より

知る人ぞ知る、RogueLikeゲームの二次創作小説です。
ムゥーン。
やっぱり面白い。
『真世界アンバー』の持ち味を生かしたユーモア精神溢れる奇抜な設定と、それを支える筆力に唸りをあげて降参するであります。


次に紹介したいのは、ハイパーバイオレンスアクション小説『Beyond the Bounds』 。

ttp://velvetchain.jugem.cc/

プレストンは、床に向けてトリガーを引き絞っていた。
 濤羅が銃声を聞きとがめた。
 フルオート射撃の音だった。
「――迂闊!」
 意図を悟った濤羅が顔色を変えて倭刀を振り切る。両断されたドアはあっけなく内側へと倒れていく。
 ドアが床にぶつかって跳ねるのと、銃声が止むのとは同時だった。
 プレストンが濤羅を見据える。
 その身体が沈んだ。
 直立不動のままで、直径1mの円形の床ごと。
 濤羅は敵手の消えた空間を呆然と眺めていた。
 安宿の床の強度などたかが知れている。マガジンに残っていた32発で正32角形の頂点を穿てば、あるいは崩せる床もあるのかも知れない。
 だが濤羅が瞠目したのは意表をつく方法で作り出した脱出ルートではなく、正32角形を正確に描いて見せた銃撃の精密さだ。
 目の前にぽっかりと開いた穴は、コンパスで測ったように正確だった。

(第3話より)

・・・・・プレストン恰好いいなあ。
現在第4話まで掲載されています。続編が待たれるところです。

*1:最近の事件とは一切無関係です。誤解なさらないようお願いします