本文より

「血族殺し、許婚殺しよ。おまえが、みずからの非道に、嫌悪以外の何を感じられるというのか」ゲイナーは、吸血剣でたわむれたときと同様、今度は言葉で突きを入れてきた。白子の技に対する不安をあおり、生きる意志をくじくためだった。
「わたしが殺した罪なきものよりも、罪あるものの数ははるかにまさる」エルリックは言い切った。ゲイナーが、彼の弱みを突こうとしているのは明らかだった。「わたしが唯一くやむのは、貴公を殺す喜びが得られぬことだ、<天秤>を裏切ったしもべよ」
(本文p318)